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人間学・古典

第十二話 「準備と成功」

中国哲学に学ぶ 不況は会社守成の好機

 

※本コラムは2000年代に井原隆一氏が書き下ろした「不況は会社守成の好機」全41話のコラムを再連載するものです。


“害は備わざるに生じ、穢(え)は除かざるに生ず”
(損害は備えのないために生じ、土地の荒廃は除草しないために生ずる=良くないことの起きるのは未然に防ごうとする努力を怠るからだ)

 これは淮南子(えなんじ)にある言葉だが、中庸には、“事は予めすれば、すなわち立ち、予めせざれば、廃す”。(ものごとは事前に準備すれば成功する、しなければ失敗する)とある。
いずれも準備の必要を説いているものである。 

とかく、物事が順調である時は、逆境のあることを忘れ、逆境の備えを忘れるものである。私は好況とは不況に備えるために天が与えてくれた準備期間と思っているくらいである。

ある会社の再建に当たったとき、目的達成後は、高収益優良企業といわれるようになったときから、ハイヤー通勤から電車通勤に変え、社内でも倹約を徹底したため、変わり者扱いされたが、
勝って兜の緒を締めることは常識と考えていたからである。

“むしろ有りと信ずべし、無しと信ずべからず”何事につけ、それはなかろうと信ずるよりあると信ぜよ。そんなことはあるはずがないと考え、気を緩めてはならない。

何ごとにも準備優先としたため銀行時代、井原のヤカン頭は心配症が原因だろうと言われたが、当たらずとも遠からず、なにしろ自分の戒名をお寺さんに定めてもらい墓石に刻み込んでいるほどであるから。


 ※栗山英樹氏から、本コラム井原隆一氏の「人の用い方」書籍「人の用い方」講演CD版・デジタル版を推薦いただきました!

 監督の仕事は、選手の心を動かし、勝利の高みに導くことです。人をいかに用いて、信頼感を高めるか―――
その答えを求めて、私は井原さんの「人の用い方」のCDを5年間、毎日球場までの往復2時間、車の中で聴き、本をカバンに忍ばせていました。選手は勝利のために厳しい練習をしているわけですから、私は素振りの代わりが勉強だと思っています。

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