企業経営者にとって銀行から借入ができるということは安心感につながります。
ところが、何らかの理由で銀行からの資金調達の道が閉ざされたとき、経営者には今までとは違った考え方が必要になります。それは、資金ショートをおこさない経営ということです。
ふつうの会社の場合、資金ショートをおこさない経営という考え方には慣れていません。利益が出すぎて納税額が通年の何倍にもなった場合、運転資金の名目で信用保証協会付の融資を借りればことがすむということが常識だったのに、当たり前にあった頼みの綱を失うわけですから。
では、困ったときに資金調達ができない会社の場合どうしたらいいのか? というと、まずは仕入や外注への支払い期間をのばしてもらうことになります。そうすることで信頼を失い仕入ができなくなることもありますが、仕入先・外注先との人間関係がしっかりとできていればあんがい乗り切れるものです。
じっさいに第二会社方式での企業再生をしてきてうまくいくのはこのケースです。人間関係をしっかりと築くとは、つきつめていえば相手に好かれることになります。
しかし、このやりかたは何度も使えるものではないのが実情です。相手との信頼関係を壊すことを何度も行えばやがては取引先も離れていきます。
そのために普段から行うこととして、経理の迅速な処理で、資金ショートをいち早く予見し対応するということになりますが、ここで多くの中小企業は挫折することになります。
なぜかというと、まず経理がいくら努力したとしても全社員がこれを理解して実行できなければ経理業務の迅速化は無理だからです。そして経理担当は経理業務には長けていても、この手の経営にはなれていないからです。さらにいえば、このての経営を続けるには、それなりの知識と経験が必要になるということもあげられます。
銀行からの資金調達ができないが生き延びることができる会社は総じて流動比率、当座比率(注1)が高いことが多いのですが、それらの比率が高くなれば自然と利益率も高くなり、税金という損金で落ちないものによって吸い上げられ、結局はうまくいかなくなることが多いものです。それでも、経理担当・社長に知識と経験があればなんとかできることも多いのです。
銀行からの資金調達ができない会社で、年初に社会保険料の滞納が発生し、みるみるうちに4か月分滞納してしまい、今さら年金事務所に話し合いにいっても手遅れというケースがありましたが、社員を整理し、業務を外注化することで、事後の社会保険料負担額を大きく減らし、滞納した分を完納した事例があります。この会社のケースでいえば業務の外注化で来期は納付する消費税額も減ることになるでしょう。
こういった解決策を導くためには経理担当・社長の知識と経験は絶対に必要になるのです。
(注1)
流動比率・・・流動資産の流動負債に対する割合。短期的な債務の支払能力の高さを見る尺度です。
当座比率・・・流動負債に対して当座資産(流動資産から棚卸資産を除外したもの)
がどのくらいあるかを見る指標
いずれも、高ければ高いほど支払い能力の高さを示します。