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故事成語に学ぶ(22) 蛇足(だそく)

指導者たる者かくあるべし

  意外に深い意味
 「蛇足(だそく)」という単語を国語辞書で引くと、「ヘビに足はないから、余計なもの。無用のもの。むだ」とある。なるほどその通りで、軽い意味で日常使う言葉だけれど、原典をたどるとなかなかに含蓄があるエピソードがまつわっている

 それ以上の功績を望みますか

 中国の戦国時代、楚(そ)の国の将軍、昭陽(しょうよう)は魏の国を打ち破り、敵軍を崩壊させ、敵の将軍を殺し、八つの城を奪う軍功を挙げた。楚軍は勢いをかって矛先を転じて斉を攻め立てた。
 さて困った斉王は、立ち寄った弁論家の陳軫(ちんしん)に、どうしたものかと相談する。陳軫は、「王様、心配には及びません。攻撃を中止させてご覧にいれましょう」と説得を請け負い、早速、斉を取り囲む楚軍の陣中に行き、昭陽と会う。
 戦勝を褒めちぎり祝ったうえで陳軫は切り出した。
 「さて将軍、今回の軍功で官位はどうなりますか?」
 「それは将軍の最高位である〈上柱国〉となるだろうな」と昭陽。
 「さらに戦功を重ねると?」「宰相だろうな」
 「なるほど、しかしすでに宰相はおられる。楚王は宰相を二人任じるわけがないでしょう」。
 そこで陳軫は、こんなたとえ話を持ち出した。
 〈ある主人が家来たちに大盃の酒をふるまった。家来たちはみんなで飲んでも少しずつしか飲めない。それならと蛇の絵を描くのを競って、最初に描き上げたものが酒を独り占めすることにすることとした。ある男がいち早く蛇を描き上げて、盃を取ったが「まだ余裕があるぞ」と蛇の絵に足を加えた。その間に別の男が蛇を描き終え言った。「蛇に足があるわけないだろう、この酒は俺のものだ」と盃を取り上げた〉
 「いかがですかな将軍、あなたは今、せっかく出来上がった蛇の絵に足を描き足そうとしているようなものです。ここは斉に恩を売って、さらなる出世の機会を待たれてはいかがか」
 
 説得を聞き分ける力
 昭陽は、「なるほど」とうなづき、軍を引き揚げて去った。
 中国古代の戦乱の時代、軍力を競うだけでなく、こうした弁論家(コンサルタント)たちが、比喩を駆使した言葉の説得力を武器に各陣営をかけ回っていた。それにも驚くが、そのコンサルタントの忠告に耳を傾ける度量をリーダーたちが持っていたことに感心する。
 いやいや、この逸話で書きたいことはまだまだあるのだが、「蛇足」となるので、このへんにしておく。
 

 (書き手)宇惠一郎 ueichi@nifty.com

 
※参考文献
『中国古典文学大系7 戦国策・国語・論衡』常石茂・大滝一雄編訳 平凡社
『世界文学大系 史記★』小竹文夫・小竹武夫訳 筑摩書房

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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