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第9回 「英語の習得」

社長の「氣」

 この原稿を書いている現在、海外での講習会の指導で、アメリカ・サウスカロライナ州に来ています。4日間の講習会は総て英語で指導し、毎晩、現地の人々と懇親をしています。
 「海外では氣のことをどのように訳すのですか」
 皆さんからよく聞かれる質問の一つです。英語では「氣」は”KI”と表します。外国の方が「氣」といって理解出来るのか不思議に思う方がいらっしゃるかもしれませんが、実は日本人の氣の理解こそ不確実で曖昧なのです。
 「元氣」「病氣」「氣になる」「氣がつく」「氣が入る」など、日本語には「氣」のつく言葉が沢山あります。馴染みがあるため、「氣」とは何かを考える機会がなく、そのまま受け入れていることが多いのです。一方、海外では初めて触れる言葉ですので、「KIとは何ですか」という問いから学びが始まります。そのため海外の方が確実に理解することが多いのです。何とも複雑な話です。
 さて、英語に自信がある方、そうでない方がいらっしゃることと思います。英語の習得において、語彙・文法・リスニングが重要であることは当然のことです。しかし、それらを磨いているだけでは現場で通用する英語にはなりません。
 私が初めて海外の講習会で指導したのは今から15年前。当時は英語がほとんど通じませんでした。高校・大学とそれなりに勉強して来たはずなのに、私の英語は現場では全く通用しませんでした。
 その原因は、「言葉を理解しよう」とばかりして「相手を理解しよう」という姿勢がなかったためです。私はリスニングが弱く、一つの言葉を聞き逃すとそれが氣になってしまい、いま相手が話している内容が耳に入らなくなる悪い癖がありました。それでは相手の話を理解出来るはずがありません。
 それまで「言葉を理解しよう」としていたところ、相手が発する氣をみて、相手が何を伝えたいのかを理解するようになってから、驚くほど言葉が通じるようになりました。考えてみれば、英語を話すということはコミュニケーションそのものであり、それまで自分が学んで来た「氣」が最も活きる場面だったのです。
 氣が通うようになってから、劇的に変化したのが質疑応答の時間でした。参加者の質問に答えるとき、質問される前に私が正しく答えて相手を驚かせることがあります。「なぜ先生は質問する前に内容が分かるのですか」と聞かれます。今回の講習会でも何度かそういう場面がありました。それはおそらく、「言葉を聞く」のではなく、「氣が通う」ことで理解しているのでしょう。
 縁あって私は現在、英会話スクールに通っています。「英会話のイーオン」の代表取締役の三宅義和さんは心身統一合氣道の理解者で、当時、三宅さんに相談したところ、私の英語習得に快く協力して下さいました。
 「自分が正しく発音できる音は聞き取れる」
 これは三宅さんから私が初めて教わった原理です。当時、私はリスニングばかりして、「正しく発音する」訓練をほとんどしていませんでした。そこで、三宅さんの奨めで中学校程度の簡単な教材で音読を始めることにしました。
 ルールは二つ。イーオンで発音のチェックを受けてから音読を始めること。雨の日も風の日も一日30分は行うこと。これを9ヶ月間続けただけで、何とTOEICのスコアが大幅に上がり(530→830)、何よりも現場で言葉が通じるようになりました。何事も「我流」ではなく、正しい訓練が必要だと再認識しました。
 「氣が通う」という土台の上に、正しい訓練があって今日に至っています。会話において、言葉を使うことが目的ではなく、コミュニケーションが目的である以上、英語の習得でも「氣」が重要なのです。
 
 
 
サウスカロライナでの講習会の様子
 
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