前回、「今年の新人社員の特徴と教え方」についてお話をしました。今回は「コミュニケーションの大事な要素である言葉と表情」についてお話します。
皆さんは、言葉が丁寧であっても無表情だったり、残念ながら愛想のない応対を受けたりした経験がありませんか?私は時々遭遇してしまうことがあります。そのような場面で、仕事柄もあるでしょうが私はいつも「あー、この方もったいないー」と感じてしまいます。なぜなら、少しの心がけや工夫で相手に与える印象はかなり変えられるからです。
まず、「言葉」と「表情」で共通することは冒頭でも触れましたが、コミュニケーションの大事な要素と申しました。その意味から、両方を個別に極めておくと両方を同時に表現するのが楽にできるようになります。
1.言葉
対面や電話で話す「言葉」については、音声表現が伴うため、今まで以上に言葉の意味と使う音声の関係を考える必要があります。ポジティブな文を相手に伝えるときは高めの音程を、ネガティブな文を伝える時には低めの音程を使います。
例えば、顔見知りのお客様が嬉しそうに「実は来週からハワイに初めて家族旅行で行くの」とおっしゃったとします。それを聞きながら、すばやくポジティブ内容かネガティブな内容か分析して、当然ここでは明るい音程を準備し、明るい表情を意識して言います。「ハワイにご旅行ですか!(お客様の言葉を復唱して浮き立つ気持ちに高めの音程で共感します)楽しみ(ワクワクしている感じは少しテンポを速めて伝える)ですねぇ。」
活字で読むと何でもないように感じるかも知れませんが、これは音声表現の練習の一つとして大切なので、研修の中で一人一人に発表をお願いしています。皆さんは思っているほど共感の言葉の音声表現を意識していないからです もしあなたがハワイに3回言ったことがあったとしても、その体験回数は封印してハワイに初めて出かけるお客様の気持ちに寄り添います。素早く自分が初めて出発した前夜の気持ちなどを思い出し、『楽しみですねぇ』を高めの音程でかつ抑揚を入れておっしゃると、お客様は、「人にも言われることで」さらにワクワクが広がります。あなたに話してよかったわと言う気持ちにもなります。それには相手の気持ちを適切に察する力がポイントです。この時体調がすぐれなかったりすると、これから申し上げることに気づくことができにくくなります。自分をいつもベストコンデションにしておく意識をお持ちください。
では感情のアンテナの磨き方をお話します。朝自宅から会社までで遭遇した嬉しかったこと・楽しかったことを5例、帰宅時に会社から自宅までで遭遇した嬉しかったこと・楽しかったこと5例を探してください。対象は些細なことで構いません。日常の中で大きな楽しい事・嬉しいことはそうそう起こらないと思いますから、ほんの小さな楽しさ・嬉しさとの遭遇例でよいのです。些細なことでも見逃さずに心が動いた対象を丹念に見つけられる能力を育むことが目的です。ただし帰宅時は朝遭遇した角度ではないところで探してください。自分の「+」の心の動きに日々向き合い続けることが、相手の心模様に敏感になることにも繋がります。
例えば、「行きの5例」
① アラームが鳴る前に目覚めた
② コンビニの新商品のパンが買えた
③ 信号が続いて二ケ所「青」だった
④ 目の前に座っていた人が次の駅で降りたので思わず座れた
⑤ 会社のエレベーターがすぐに一階に来た
「帰りの5例」
① 職場の仲間とショッピングをした
② 久しぶりに大学の時の友人から電話があり、○○に赤ちゃんが生まれたと聞いた
③ 社内放送が明るく元気な女性の声だった
④ 星がすごくきれいだった
⑤ メールボックスに○○からの手紙があった
お読みになって本当に細やかなことでいいのだなと感じたと思います。ただこれが毎日となると、大変さもそれなりに出てきます。
そのようなときは、足元に目をやったり空を眺めたり、違う道を通ったりと工夫が必要です。一日合計10例を覚えておくことは難しいので、メモを取り続けることをお勧めします。一ヶ月で約300の嬉しい事・楽しいことが貯まります。これを一年頑張ると心に、ひいては身体中に約3,600例もの「+」が貯まります。
今あなたの目の前に、2人の方があなたの方を向いて立っているとします。一人は身体に約3,600例の「+」を内包しているAさん、もう一人は内容していないBさんとします。あなたはどちらの方に直感として良い印象を抱くと思いますか。ほとんどの方はAさんを選ばれるのではないでしょうか。それはたとえ外見に見えなくても、内面や感情は言わずもがな外面にオーラのように漂うからです。
この方法をスキルとして身につけると(でも、「あー、もう私はこれ以上「+」を探せない」と思ったら、そこからが勝負です。そこを耐えるとさらに細やかな目線で「観える」ようになります)、アンテナを磨いたことで感じるものが増え、それがお客様対応に自然と活かせます。お客様のおっしゃることへ寄り添う気持ちが以前よりきっと増している自分に気づくでしょう。
2.表情
「1.」で「+」をスキルとして身につけたあなたは、お客様に寄り添う温かみのある言葉を発する時、以前より表情を出しやすくなっていると思います。表情は表情筋の動きで変わるのですが、顔には30以上の表情筋があると言われています。日本人はどちらかというと表情が豊かではありません。表情筋をトレーニングすると表情が柔らかくなります。代表的な筋肉のトレーニングの仕方を5種類紹介いたします。
① 口輪筋(口の周りの筋肉)
唇を強く前に突き出して「ウー」、次に口を大きく開けて「アー」。「ウー」「アー」を一回として10回続ける
② 大頬骨筋(口角と目尻を斜めに結ぶ笑顔を作る時の筋肉)
右目の目尻と唇の右口角を「いち」の「い」で素早く近づける。次に「いち」の「ち」で左目の目尻と唇の左口角を素早く近づける。「いち」の動きを10回続ける
③ 眼輪筋(目の周りの筋肉)
目をできるだけ力強く閉じて、次に目がこぼれるくらい大きく開く。これを1回として10回続ける。
④ 前頭筋(額の筋肉)
普通の表情から額に皺ができるくらい眉を挙げてパッと力を抜く。これを10回続ける。
⑤ 皺眉筋(鼻筋よりの眉辺りの筋肉)
目を細めたまま、眉と額を一緒に引き上げる。次にパッと力を抜く。これを一回として10回続ける。
週に何度か①~⑤までを1セットとしてトレーニングを続けることをお勧めいたします。
※今回は「言葉」と「表情」についてお話してきましたので、表情の中の「笑顔」には触れておりません。笑顔についても前述の表情筋のトレーニングはとても有効です。また、自分が笑顔をしている「つもり」でも、相手の感じ方にはギャップがあります。相手が受け取る笑顔は、その半分位の笑顔しか伝わらないと理解するとよいでしょう。どうぞ自分の笑顔の自撮りや、鏡で客観的に笑顔チエックをなさってください。より良い笑顔は一生の『宝』と言えます。























