多くの企業(お店)が、“こだわり”があるにもかかわらず、オンリーワンになれないのは、ポジショニングを獲得し、ブランドを構築することで、利益を生み続ける(=経営を継続させる)仕組みを確立できず、ブランドを浸透させるための期間(大体3年間)、企業(お店)が存続できないからです。
利益を生み続ける企業(お店)には、必ず“こだわり”を遂行する過程で、大義を掲げ、現場の情熱(=エネルギー)を生み出すことで、経営理念を軸に企業風土を戦術化し、オンリーワンのポジションで利益を生み続けることができる経営者が存在しています。
そこで今回から全三回シリーズにて、“こだわり”を<ここしかない、今しかない、私しかないという-売れる仕組みと取り組み>と<独自性・賑わい・調和(組み合わせ)-買いたくなる仕組みと取り組み>に結びつけ、企業風土を戦術化した経営者だけが実践した経営判断を、実践事例で解説いたします。
~カンパニースピリット(企業精神)~
今日本で人気の的になりつつあるLCC(格安航空会社)ですが、欧米では90年代あたりを境に順調に利用者数を伸ばし、空の勢力図を次々と塗り替えてきました。
その中でも絶大な顧客支持を得ている企業にアメリカでLCCとして有名なサウスウェスト航空があります。
同社の経営理念は、「温かい心、親しみやすさ、個々人のプライド、そしてカンパニースピリットを重んじ、最高の顧客サービスを提供すること」で、特に「カンパニースピリット(企業精神)」が現場士気を向上させ、同社のコアコンピタンス(競合他社を圧倒的に上まわるレベルの能力)である“当社は最格安航空会社である”の最大化に寄与しているのです。
サウスウェスト航空の現場士気を向上させるカンパニースピリット(企業精神)とは、<戦士の精神>と呼ばれる、本社で必ず現場に浸透させる以下の6つです。
・ハードワーク
・ベストに固執する
・勇気を持て
・常に緊急対応しろ
・たゆまずやり通す
・革新を起こせ
サウスウェスト航空の経営者は常にコアコンピタンス(競合他社を圧倒的に上まわるレベルの能力)を最優先し、カンパニースピリット(企業精神)を軸にした経営判断(一例:たゆまずやり通す)を下すのです。
それは創業者であり、最高経営者を長年務めたハーブケレハーが、ある部下に「ヒューストン―ラスベガス間で軽い機内食を出すと喜ばれそうなことがわかりました。」といわれた時、「機内食を追加すれば、当社はヒューストン―ラスベガス間で最格安航空会社になれるのか?」と聞き、「無敵の格安航空会社となるのに役立たないなら機内食は出さないよ」と答えたことからも明らかと言えます。
直近では航空燃料の高騰に見越して価格の変動リスク(高く買わされる)がありながらも、まず実践したこと(一例:勇気を持て)は、<燃料の買い貯め>であったように、このカンパニースピリット(企業精神)は、2代目、3代目の経営陣にも同社の経営判断を下す時の精神として引き継がれたのでした。
同社は、経営理念にカンパニースピリット(企業精神)を言う言葉を盛り込むことで、企業風土を戦術化し、経営者がコアコンピタンス(競合他社を圧倒的に上まわるレベルの能力)にこだわり、競争する大義(当時価格支配していた大手航空会社を競合相手とベンチマーク)を明確にすることで、現場の情熱を導き出し、独自の企業風土を戦術化できる経営判断を下すことを可能にしたのです。
サウスウェスト航空の詳細は拙著「3カ月で売り上げを20%アップさせる3つの仕組み」で解説しています。是非、一読ください。
清水ひろゆき