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第101話 「何を変え、何を変えないか」の峻別を!

北村森の「今月のヒット商品」

今回で101話目となるこの連載コラムのタイトルは「今月のヒット商品」ですが、「今月の」ではなく「今月も」というテーマで綴りたいと思います。つまり、最近に限らず、ずっとヒットしているロングセラー商品の話です。

2025年は大阪・関西万博がなにかと話題をさらいました。また、戦後80年という年でもありました。

で、今回は、大阪・なんばで終戦の1945年に創業し、それ以来、ロングセラーとして地元の人たちに愛されている商品事例を取り上げます。

 

 

なんば駅からすぐのアーケード街にある「北極アイスキャンデー」です。お店の名前も商品の名もこれです。経営するのはアークティックという企業であり、現在は3代目の社長が奮闘しています。初代はお父さま、2代目はお母さまだったそう。


高度成長期、バブル期、平成不況、そしてコロナ禍を乗り越えて、いまもアイスキャンデーは売れ続けています。現在の年間売り上げ数は約50万本。大阪に暮らす仕事仲間に聞くと、地元の人にとっては自分が楽しむものであると同時に、手みやげの定番としても親しまれているといいます。持ち帰りにする場合、お店がドライアイスを用意してくれます。


1945年の創業時から変わらずあるのは「あずき」「ミルク」「パイン」の3種類。現在ではラインナップを9種類に増やし、「ミックスジュース」なども選べます。今の販売価格は1本200円から。1945年の創業当時は20円だったそうです。

 

 

こうしたロングセラー商品に触れるとき、私はいつも知りたくなることがあります。それは、長年のあいだに「何を変え、何を変えてこなかったか」です。


これは商品企画、マーケティングを研究・実践するうえでとても大事なポイントであると考えています。何も変えなければいつしか消費者は離れていくでしょうし、だからといってやみくもにリニューアルを重ねると商品の本来の持ち味を損なってしまって消費者の反発を招きかねません。


つまり、一度成功した商品にとって、その後の趨勢を決めるのは、まさに「何を変え、何を変えないか」の峻別にあると言ってもいいでしょう。


では「北極アイスキャンデー」は80年のあいだに何を変え、何を変えてこなかったのか。先日、なんばのお店に足を運んで、3代目に確認してきました。


まず、変えたのは、パッケージだそうです。1990年にセロファン包みから袋入りに変更したそうです。衛生面などの商品管理に関する意識の変化を受け止めた判断だったらしい。次に、1990年代半ばまでには、ネット通販に早くも乗り出しています。大阪からほかの地域に転居した人にもアイスキャンデーを味わい続けてほしいとの気持ちがあってのことだったと聞きました。

 

 

では、変えていないところは?


ひとつ目は味と製法だそうです。原材料の充填作業のほかは、現在も手作業によるのだといいます。ふたつ目は原材料の調達。あずきは北海道産、佐藤は白双糖(しろざらとう)といった具合です。あずきをみずから炊く工程から進めているそうで、あずき不作の年などは炊き方を工夫することでアイスキャンデーの味に影響を及ぼさないように留意しているらしい。


変えていないところはまだあります。それはアイスキャンデーに刺さった棒で、創業時から一貫して奈良県の吉野檜を使っています。近年は輸入物の木などに変えれば安価で容易に仕入れられそうですが、3代目によると、漂白加工していない吉野檜にこそ価値があると考え、ずっと変えずに頑張っているとのことです。


そして、棒の差し方も80年間おんなじといいます。上の画像をご覧いただくとわかるように、斜めに刺さっているのです。


これはどうしてかと尋ねると、製造工程で斜めに刺すほうが都合よかったのがそもそもの話だったそうなのですが、それによって買った人が食べやすいという思わぬ効果が生まれたほか、持ち帰り用にドライアイスを収める際にもちょうどいい感じになるということも判明し、創業時からずっとこの形をとっているのだそうです。それが時を経るとともに、「北極アイスキャンデー」の特徴として、人に語られるようにもなっていったわけですね。


ここ数年、この「北極アイスキャンデー」からは、「ポケモン」の専用パッケージアイス、「呪術廻戦」のイメージカラーによるコラボ商品、JR東海の「スマートEX」ユーザー向けの限定商品なども登場しています。この冷たくて甘いロングセラーに惹かれるのは消費者のみならず、異教種の企業にとっても同様ということなのでしょう。


3代目はいいます。「ロングセラー創出に必要なのは、飽きないおいしさではないでしょうか」。また、それは「ひとくちめのインパクトがどうかとは別の話です」とも力説します。インパクトにもまして飽きのこない仕上がりこそが大事なのだと…。


3代目は「おいしさ」と表現してくれましたが、これは食以外のあらゆるカテゴリーにも通じるロングセラー実現の要諦ではないか、と私は感じました。

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