こんにちは、1位づくり戦略コンサルタント佐藤元相です。
企業経営において「制度を整えること」は重要です。
しかし私は多くの企業を支援する中で、次のような場面を何度も見てきました。
- 制度は整っている。
- 評価制度もある。
- 教育制度もある。
それでも組織がうまく機能しない企業が存在します。
一方で、制度が特別に多いわけではないのに、組織が活き活きと動いている会社もあります。その違いはどこにあるのでしょうか。
その答えを示している企業の一つが、東大阪に本社を置く株式会社ベルです。
株式会社ベルは1992年創業の総合ビルメンテナンス会社で、清掃・環境衛生・設備保守・リフォーム・警備・鳩対策施工・保育・介護など幅広い事業を展開しています。医療機関や公共施設、企業など多様な顧客にサービスを提供しています。
この会社の経営の中心にあるのが、「関わる人すべてを幸せにする」という理念です。
代表取締役社長の奥斗志雄氏は、制度よりも「風土」をつくることを重視して経営を行っています。
奥社長はこう語ります。
「文化は真似できない。だからこそ最大の差別化になる。」
制度は真似できます。
しかし文化は真似できません。
ここに企業経営の本質があると私は感じています。
どん底から生まれた経営思想
奥社長の経営哲学は、順風満帆の中で生まれたものではありません。
2000年前後、取引構造の変化によって大口案件が消失しました。
売上は急減し、社員の予定表が空白になるほどの危機に直面します。
その時、奥社長は外部環境を責めるのではなく、自分自身に問いを向けました。
- 人は何のために生まれてきたのか
- 経営とは何か
- 誰を幸せにしたいのか
この問いの中から導かれた結論が次の言葉です。
経営とは、人を幸せにする覚悟である。
理念は順調な時には飾りになりがちです。
しかし試練を通して理念は本物になります。
ベルの理念経営は、この危機から生まれました。
価値前提経営
奥社長は経営を次の二つに分けて考えています。
事実前提
売上・利益・規模・組織人数など
価値前提
理念・目的・大切にする価値観
奥社長は次のように説明します。
「数字を目的にすると人が手段になります。
価値を目的にすると数字は結果になります。」
ここで重要なのは順番です。
目的は追求するもの。
目標(数字)は達成するもの。
この順番を守ることが経営の根幹になります。
制度ではなく風土
ベルの特徴は「制度が多いこと」ではありません。
制度が風土になっていることです。
例えば次の取り組みがあります。
- ゴールドスタンダード(行動基準の明文化)
- 全社員大会による賞賛文化
- 誕生日祝いと家族参加行事
- 子どもがいる社員の家庭をサンタになって訪問
- 入社する社員宅を家庭訪問
- 退職時の感謝の儀式
これらは制度として存在していますが、目的は制度運用ではありません。
人を大切にする文化をつくることです。
制度は手段であり、目的ではありません。
やめられない仕組み
業活動で最も難しいことは継続です。
奥社長は3S活動(整理・整頓・清掃)を例に挙げます。
多くの企業が導入しても、やがて形骸化します。
その原因は「やらされ感」です。
ベルでは次の仕組みを採用しています。
- 仕事の中に3Sを組み込む
- ローテーション巡回
- 勉強 → 実践 → 振り返り
- 共通定義の徹底
つまり強制ではなく、仕組みによって継続するのです。
やめられない仕組みをつくる。
これが文化定着の核心です。
文化と事業戦略
文化は抽象論ではありません。
事業戦略と結びついています。
ベルではビルメンテナンス事業において、精神科病院清掃に集中しています。
専門性を高めることで地域ナンバーワンを目指しています。
さらに鳩対策事業では商品開発を行い、メーカー化と加盟店方式を展開しています。
いずれも一点集中の戦略です。
しかしその土台にあるのは、人を大切にする文化です。
文化があるから専門性が育ちます。
専門性があるから差別化が生まれます。
最後に
私はランチェスター戦略を軸に次世代へ事業をつなぐ中小企業支援を行っています。
ランチェスター戦略では弱者は
- 戦う場所を絞る
- 資源を集中する
- 差別化する
ことで特定分野1位を目指すことを提言しています。
株式会社ベルの経営は、まさにこの原則を体現しています。
精神科病院清掃という専門領域に集中し、専門性を高めています。
さらに文化によって社員の意識を統一しています。
ここで重要なのは、文化が戦略を支えているという点です。
文化があるから専門性が磨かれる。
専門性があるから単価が上がる。
単価が上がるから良い人材が集まる。
つまり
[文化] → [戦略] → [成長]
という好循環が生まれているのです。
多くの企業は制度を整えようとします。
しかし本当に重要なのは制度ではありません。
風土です。
文化は時間がかかります。
だからこそ競争優位になります。
価格は真似できます。
商品も真似できます。
制度も真似できます。
しかし文化は真似できません。
これからの時代、企業の競争力を決めるのは
文化を設計できるかどうかだと私は考えています。

















