来年4月の消費税率8%への増税の影響を少しでも避けたいという目的から、住宅取得やリフォーム工事、自動車や高額商品の駆け込み購入が話題になっている。確かに来年に必要なものや買い替え計画があったものは、当初の購入時期を少し前倒ししてでも『駆け込む』価値はあるだろう。
問題は、「Needs」という確実な必要性からの購入ではなく、「Wants」という単なる欲求からの購買が、消費税率UPを避けるという「大義名分」の下で実現することにある。企業経営も家計管理に関しても、これまでの合理化や節約によって得られた貴重な資金が、駆け込み購入によって消費されてよい訳はない。
年初来のアベノミクス効果や4月からの日銀の異次元金融緩和により、9月の消費者物価上昇率は0.7%と漸くデフレ脱却も視野に入ったように見える。その上に3%分の消費税の負担増加があるとなれば、今から駆け込み購入しておく理由は充分あることも理解できる。しかし、2015年の物価上昇率は需要の先食いによる反動減により、マイナス予測があることも考慮しておく必要があるだろう。
前回の消費税率UP後の景気後退は、税率UPが主因ではなく、当時起きた拓銀や山一證券の破綻など金融危機が主因と考えられている。今回は駆け込み需要の反動減対策として、5兆円の財政支出等が講じられるので、物価上昇率や景気に大きな反動減がないよう祈りたいが、高額品の需要を先食いしてきたことは紛れもない事実である。
また、消費税は2015年10月から10%への税率UPも予定されているが、それでも2020年までに中期的に日本が財政再建する見通しが立たない。OECDやIMFも、財政再建のためには消費税率15~20%以上が必要と勧告している。EU諸国の消費税に相当する付加価値税率が20~25%あることも考慮すれば、10%は一時的な通過点に過ぎず、アベノミクスが成功を収めても依然としてわが国の財政は危機的状況が続くのである。
インフレターゲット2%が達成されるかどうか、まだ予断を許さない。しかし、インフレへの備えは、①「攻めの対策」としてインフレに強い金融商品で資産運用することと、②「守りの対策」として経営や家計で更なる合理化をすすめること、の2点を考えるべきだろう。資産運用にはリスクがつきもので、攻めだけでは損失を被ることもあるからである。周囲のムードに流された駆け込み購入により、貴重なお金を消耗しないように戒めたい。
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