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人間学・古典

第17講 「言志四録その17」
上官たる者、事物において嗜好無かるべし。ただ義を嗜み善を好むは、厭わざるのみ。

先人の名句名言の教え 東洋思想に学ぶ経営学

【意味】
上司上官は物事の好みを示してはならない。ただ正道や善行を好むことは、この限りではない。


【解説】
2200年前に書かれた名著『韓非子』に「楚の霊王、細腰を好みて国中に餓人多し」という説話があります。
時の権力者、楚の国霊王(在位BC540~BC529)が、細腰の美人(痩せた美人)を好むという評判が立つと、
国中の女性の間に無理なダイエットが流行して餓死者が出たという話です。

著者の韓非子は、君主が好悪の感情を示してしまえば、
臣下は意図的にその感情に合わせた行動を取 り繕うことができるといいます。
そして迎合的な態度の臣下が多くなれば、臣下の本当の姿が現れませんから、
結果として君主は臣下の本心を掌握できなくな り、裸の王様になってしまうというのです。


掲句の前段は韓非子の言葉を参考にして述べられたものと予想されますが、
後段の部分は、言志四録の著者である佐藤一斎先生の心意気が現れた言葉です。
前段は上官たる者は目先の欲望に関わる好みをチャラチャラと部下に示すなという主張に対して、後段は、
正しい生き方に限っては、下の者の前ではむしろ積極的に堂々と披露して、お手本になる心意気を忘れるなということです。

上司になれば金も地位も自由になりますから、往々にして酒・女・博打に溺れ、その地位を手放す者が多くなります。
この傾向は今も昔も変わりはありません。
それ故に地位や権限を有する者はガードの堅い品性ある日常生活が必要になります。
ゴルフのスコアが上ったと喜ぶようではまだまだですし、贈り物・ちやほや待遇・競馬の一攫千金を喜ぶようでも失格です。
この程度の上司ですと部下に心を見透かされて、その下品さに付け入る取り巻き連中が増加します。
この集団を派閥といい、組織に巣食う「獅子身中の虫」となり、組織や国家を堕落させます。


だからこそ「義を嗜み善を好む」ような雰囲気の職場が大切となります。
上司が率先して正義実践や善行実践を心掛け、自分達の組織のみならず社会や国家を良くする先頭に立つことです。
そうすれば下の者も見習います。
下の者もいずれは上司になりますから、明るい溌剌とした職場が徐々に構築されていきます。
このような職場を『種徳を育てる職場』といいますが、
後々の後輩社員がどれほど幸せを享受して業務に励めるかは計り知れないものがあります。


中国の有名な書物『菜根譚』は天下の名著の一冊ですが、その理由は徳に関する次の三句にあります。

「業を立て種徳を思わざれば、眼前の花と為る」
・創業しても社会貢献という種徳を根付かせようとしなければ、
一時的に儲かって も眼前の切花のようにすぐ倒産廃業に追い込まれる。

「徳は事業の基なり」
・創業者やトップの心には、社会貢献という徳心が必要である。
なぜならば、この徳心こそが永続事業の土台となるからである。

「道徳を棲守する者は、寂寞たりとも一時なり」
・道徳実践を日常とする者は、失業浪人してもほんの一時である。
そのような素晴らしい人物を世間が長い間放置しておくことはないからである。
 

 
杉山巌海

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