少子化と高齢化による人口減少の結果、日本全国で適正に管理されず放置された空き家が急増して問題になっている。これは人口減少が深刻な地方都市だけの問題ではなく、全国的に有名な住宅地を有する東京都世田谷区などの都市圏住宅地でも共通の問題である。
戸建住宅であれアパートであれ、放置された空き家が増加するということは、ゴミの不法投棄場所や不審者の住処になるなどの防犯上の問題も発生する。また、ちょっとした地震や台風などで倒壊する危険や落雷などで自然火災が起きる危険など、防災上も大きな問題だ。景観の悪化により、所有者個人の資産価値だけでなく地域の資産価値も毀損する。
さらに、7月に総務省が発表した住宅・土地統計調査によれば、国内の住宅総数に占める空き家の割合(空き家率)が、2013年10月時点で13.5%と過去最高を記録した。5年に一度実施するこの調査で、前回2008年の空き家率は13.1%だったので、0.4ポイント差ではあるが、実数として63万戸と着実に増加している。全国的に7戸に1戸は空き家である。
その一方で、来年1月からの相続税の増税に備えて、いまや全国的に相続対策ビジネスが盛況だ。有力な節税対策の一つとして、遊休土地上にアパートやマンションなどの貸家を建築して相続財産評価を減額する方法がある。既に実行済みの方も多いはずだが、これから検討する方は建築後の中長期的な稼働率をしっかりと予測して頂きたい。
空き家率が20%を超える県もあり、竣工当初は満室でも数年経過して老朽化が目立つと空き家率も急増するものだ。甘い見通しに基づく建築計画は不動産経営そのものを危うくして、結果として相続税の節税効果以上の資産損失を招くおそれがある。不動産経営の採算性に関して、従来以上に厳しい目を向けて計画しておきたい。
アベノミクスの地方再生戦略などにより、規制改革特区などに指定された地方都市の復活も将来的には期待できよう。しかし確実性が高いのは、人口流入が続き、常に再開発と産業革新が起きる東京などの大都市圏と地方の中核都市ではないか。特にその都心部は、職住近接を望む若年層や学生など単身者需要に底堅いものがある。
今後も全国的に単身世帯の増加が確実であっても、比較的高所得者は利便性や居住空間の快適さに関して妥協しない。このような厳しいユーザーに選択されて将来も競争力を維持し続ける物件なのかどうか、借主の立場になって確認することが重要である。
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