世界の金融市場が不透明感を増す中で、円高が続いています。東日本大震災後の1ドル76円25銭という円高記録を更新するかのように、8月に入ってからも円高に歯止めがかかりません。
これは、8月上旬に米国債の格付けが「AAA」から「AA+」に格下げされたことに加え、ギリシャ・ポルトガルなどの南欧諸国の政府債務問題や中国の不動産バブル崩壊懸念などが絡み合って、世界の金融市場が動揺しているためです。ある問題が前進しても、別問題が蒸し返され抜本的な解決策が示されないので、緊急避難である円やスイスフランなど安全通貨への回避措置が長引いています。
円は、ユーロや資源国通貨である豪ドルやカナダドルなどに対しても高くなっています。また、国内の預貯金や円建て債券の超低金利も相変わらずなので、この円高を資産運用に生かそうという目的で、外貨建ての債券や投資信託の人気が続いています。
しかし、為替相場の予想は専門家でも難しく、不可能といっても過言ではありません。さらに、添付の為替推移表に見て取れるように、年間の最大変動幅は米ドルで25円(1995年)、ユーロで56円(2008年)、豪ドルで49円(2008年)もあります。外貨建て資産の魅力は、国内外の金利差や高い分配金実績ですが、年間変動幅からも為替変動リスクが非常に高いことが分かります。
結局、個人投資家がこのリスクと上手につきあうには、為替変動の影響を軽減するための『取得時期の分散』が肝心です。具体的には、『ドルコスト平均法(定時定額購入法)』により、毎月一定額を小口に分けて継続購入することで実現できます。長期的に定額購入を続けると平均購入単価を下げることができるのです。また、平均購入単価を上回ったタイミングで利益確定することにより、為替差益を得ることができます。為替変動はリスクではありますが、その変動を活かして焦らずじっくりタイミングを図れば利益を得る可能性があるわけです。
資産運用は、性急さや短気と短期は禁物で、気長さと長期計画とが肝心です。その点では、人生設計そのものと共通するのではないでしょうか。