2008年10月に「中小企業経営承継円滑化法」が施行されて、1年が経ちました。
この法律は、従来から問題の多かった中小企業の事業承継を円滑に進めるために、
関連法制を抜本的に整備・拡充するために定められました。
世界同時不況に襲われて、将来の事業承継よりも目前の危機突破に全力を注ぐ状況ですが、
危機後も念頭に考えておくことがあります。
この円滑化法に基づき次の3つの対策が講じられました。
第1に本年3月に施行された「遺留分に関する民法の特例」です。
事業承継目的で後継者に自社株や事業用資産を集中的に贈与や相続させた場合に、
非後継者が「遺留分の減殺請求」を起こすことを未然に防止する解決方法が示されています。
この制度は相続開始前の合意が前提なので、社長が関係者の利害調整をする指導力が不可欠です。
第2は事業承継に関する金融支援策。
経営者死亡による相続税の納税資金はもちろんのこと、後継者が
分散した自社株を取得する資金や代償分割資金も融資対象です。
従業員など親族外の後継者が自社株を買取る資金も含まれます。
個人融資の他、経営者交代により運転資金が必要な法人への融資も可能ですが、
どの場合も経済産業大臣の認定が必要です。
第3に非上場株式等に係る相続税、贈与税の納税猶予制度があります。
この制度は、「対象会社」から相続対策で設立することが多い「資産保有型会社」や「資産運用型会社」が
除外される等、適用要件が厳格ですが、経営を承継した相続人が死亡時まで対象株式を保有し続ける
等の場合には、猶予税額が免除(つまり納税が免除)されます。
どの対策も計画的な事業承継の取組みが欠かせないので、
各対策の適用要件を整備するなど、目前の危機と共に将来の危機への備えにも目配りしておきたいものです。
- ホーム
- 会社と社長のための資産管理講座
- 第21回 「自社株相続に関する条件整備にも関心を!」