この数字は、日本の人口に対するドラッグストアの店舗数の割合である。
日本チェーンドラッグストア協会によると、ドラッグストアの店舗数は全国で16,200 店舗あり、日本の人口約1 億3,000 万人として単純計算すると、8,000 人あたり1 店舗が存在することになる。
このような状況下においても、大手ドラッグストアは出店意欲が旺盛で、近い将来、2 倍増の3 万店舗に増加すると見込まれている。4,000 人に1 店舗という、超狭小商圏化時代が到来するのである。この過当競争の中で、ドラッグストアは、どう生き残ろうとしているのか―。
あるドラッグチェーンは、その活路として、通販型のきめ細かな顧客管理手法を取り 入れた戦略を打ち出している。ドラッグストア内に併設した「かかりつけ薬局」としての機能を生かしながら、宅配サービス機能を付加することで、リピーター客の育成・確保を強化。利便性を高めて、お得意さまを増やす施策により、狭小商圏でも成り立つ戦略にシフトしている。
もはや大型店舗を構えて品揃えを充実させ、顧客を呼び込む「集客型」店舗の時代 は終わり、これからは、店舗側が顧客に近づいていく「接客型」店舗の時代なのである。
この商圏の狭小化は、ドラッグストア業界だけの話ではない。オーバーストアは、人 口減や高齢化の進展に付随する、日本社会の一つの現象であり、この変化に対応していくためには、地域特性や消費者ニーズ、ライフスタイルをくみ取った、売り場づくり、取扱商品、サービス内容の改変が求められている。
業界は異なるが、現在、その取り組みにより成功を収めているのが、「餃子の王将」 だ。同社は、店長に権限を持たせ、地域性や周辺環境に合わせて、その店独自のメニューやサービスを提供していることで有名である。各店舗での調理を基本とし、「ご当地メニュー」も存在するという。
ある神奈川県の「餃子の王将」は、店長を含めてスタッフ全員が女性で、住宅街、女子大から数百メートルという立地を生かし、「女性が入りやすいお店」をテーマに据えている。
女性に好まれるメニューや接客サービス、店舗の雰囲気作りに工夫を凝らし、独自にファミリーレストラン的「餃子の王将」を作り上げて売上を伸ばしている。 チェーン店ながら、地域に密着し、顧客の生きた声を取り入れる努力をして、オンリーワン性を磨いてきた結果である。
このように、オーバーストアの時代に対応するには、顧客に近づき、顧客の本音を知 り、顧客の日常に寄り添うことが一番大切だ。基本的に通販業界は、固定された商圏を持たず、有店舗に比べて自由度が高いものの、過当競争下にあることは同様である。
小売・サービス業が、どんどん通販的手法を取り入れて、業界のボーダーレス化が進んでいる今、我々は、業態間競争に勝ち残るためにも、さらに通販的機能を深耕させていかなければならない。