今、ヤマダ電機、エディオンという売り上げ規模で生き残りをかける大手家電量販店は、各社資本業務提携、出資などの戦術を用い、勝ち残ろうとしています。一方、業界第3位のケーズデンキは、企業理念に“頑張らない経営”を掲げ、地域密着のサービスを顧客に提供し、オンリーワンのブランドを確立しています。
同社は1947年茨城県水戸市で創業後、2代目社長でもあった加藤修一現会長が、「業界1位にならないようにがんばらない事を心がけている」を基本に、「1位になった会社はやがて衰退してしまう、だから、ゆっくりと成長することを目指す」をモットーにブレない経営軸を確立しています。
同社が掲げる“ゆっくり成長する”こととは、以下の社員の満足度をアップさせる仕組みでもあります。
●会社がゆっくり成長するためには、全員が最大の力を発揮する必要があり、そのため同社は家電製品以外は扱わず、家電だけに集中することで、社員が覚えることを単純化(家電以外は覚えなくてよい)し、全員を戦力化している
社員は、誰もが役に立つ(戦力になる)と感じれば、やる気になります。つまり、やる気になるには、成功体験=シンプルなことで役に立つ 仕組みが不可欠なのです。
~理念経営は、誰もが戦力になる仕組みが不可欠~
同社は、理念経営<頑張らない経営>で最も大切なのは従業員、次いでお取引先、その次がお客様と考えていますが、その詳細は以下のとおりです。
従業員を大事にして、働きやすくのびのびした良い環境をつくると、従業員はお客様に親切にし、お客様を騙すようなこともしなくなります。
そして、大事なお取引先との関係を良くすれば、余った商品ではなく、人気の商品を同社に納入してくれるようになります。
その結果、お客様が良い商品を買ってくださって店が儲かり、最後に株主が儲かるのです。
(同社は社員が株主となっている)
つまり、先の優先順位(最も大切なのは従業員、次いでお取引先、その次がお客様)が成り立つには、社員誰もが戦力になる仕組み(効率化と生産性)が下記のように不可欠です。
●働きやすい60パターンを超えるシフトを導入し、現場を楽にしている
●出来る人を増やすのではなく、出来ない人を減らしていく人材戦略
●100点満点の人を育てるより80点の人を多く輩出
理念経営とは、全ての社員を戦力化する上で成り立つ経営手法なのです。
~勝ち残る理念経営の実践とは??~
ケーズデンキは、理念経営を実践するために、都会に店を作らないという主義を徹底しているのですが、実は、都会に店を作らないことは、理念経営の本質とも言える、地域密着の戦術そのものなのです。
家電量販店は、大きな店で品揃えを豊富にして、遠いところからお客様を呼び、利益を生み出すビジネスモデルだったのです。しかし、出店場所がなくなり、また不景気のため都市部に出店地が見つかると、一部の家電量販店は、出店コストが高くても、出店し、利益を生み出そうと努力しています。
が、同社が都市部に出店しないのは、出店地が都市部にある、ないに関わらず、都市部で競争すれば(出来ないことはしない=企業理念)、頑張らない経営の軸を崩さなければいけないから、出店しないわけです。
都市部ではない、郊外の家電量販店なら、儲かるか?というと、郊外立地では、お客様に行けば必ず探しにいった商品が必ずあると思ってもらわなければ、顧客のロイヤリティーは獲得できないため、日常のニーズ商品を充実させる必要があります。
そのため同社は、自社の競合店舗の近く(例:ヤマダの郊外型店舗)にぶつける形で、店舗面積が1.5倍から1.7倍もある店舗を出店し、売り場面積の広さと、品揃えの良さで家電大手を迎撃することで、地域に密着した不可欠なお店の地位を不動のものとし、顧客支持を勝ち取ろうとしているのです。
~社員が辞めない地域密着戦術とは!!~
同社の本当の地域密着としての強さは、社員のために働く場所を特定してあげていることです。
会社が、「九州の人に北海道へ行け」と言わずにすめば、社員は大切なコミュニティー(家族や親戚、友人など)と離れずにすみ、離職率は減ります。
社員(人)の幸せとは、大切な人と離れないことでもあります。
同社は社員のために、を“安心”という言葉に置き換え、先の地域密着の施策を次のように述べています。
「なにも電器屋をやるのにわざわざ北海道まで行かなくても、それは北海道の人がやればいいということです。社員はあまり遠いところへ行くと不安ですけど、それで安心できます。また給与水準が地域によっては少し違っており、エリアごとに満足する水準でやってもらえます。(コストダウン)そういうことで会社を分けてある(子会社が以前のままで地域のお店として存在)わけです。」
~社是をつなぐ、頑張らない経営とは!?~
同社は社是として「感謝・健康・親切と愛情・専門店の誇り・生産性の向上」を掲げ、会社の考え方を文化として社員全体に伝わり、根付くようにするため、急に成長せず(先輩が育たないうちに後輩が来てしまうと、知らない人の下に後輩が付いてしまい、考え方が途切れる)、社員の考え方を一緒にするため、成長もゆっくり=「頑張らない経営」を実践しているのです。
社是とは、会社の方針を示したもので、それは企業文化を育みます。
同社は、常に、変わることのない文化を育む、社是がつながる速度でなければ理念経営は実現できないことを知り、それを愚直に実践しているのです。
ケーズデンキHP
http://www.ksdenki.com/corp/
H&Hコンサルティング
“企業が活きる知恵”
~チェーンオペレーションからチェーンマネージメントへ
http://www.hh-consul.jp/column.cfm?ID=83