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経済・株式・資産

第21回 ソフトの優位性でハードで盤石な地位を確立「ホシザキ電機」

深読み企業分析

競争というものは、競争のキーポイントが明らかになってしまうと、非常に激しい競争になってしまう。しかし、同じ視点に立たないと、その競争のキーポイントが見えないような場合は、かなり高い確率で安定的なビジネスが構築できる。

一番わかりやすい例が、ディスカウンターである。NB商品を他社より安い価格で販売するディスカウンターで長期間にわたって成長した企業はない。総合スーパーが衰退した最大の理由も安いことを前面に出したためである。これは、価格は誰の目にも明らかであり、ライバルも商売相手より1円でも安く販売しようとするため、競争が同質的になってしまうからである。
 
同じお得感でも100円ショップは意外に健闘していて、長期的に成長を遂げている会社もある。これは価格競争にならないという点がポイントである。99円にしたからといって、それで流行るかというとそうではなく、置いてある商品の品ぞろえや質で勝負が決まるためである。
 
特に多くの市場が成熟化し、国内の製造コストも高止まりしている日本において、技術進歩の小さな製品市場においては、ライバルとの競争を同質化させないためには、製品以外の部分のソフトでの競争力を磨くことが、高収益を上げるための有効手段であると考えられる。
 
ホシザキ電機は業務用冷蔵庫で我が国トップシェアを誇る企業である。業務用冷蔵庫の主たる顧客は外食産業や中食産業である。中食産業は多少成長しているものの、外食産業は一貫して縮小しており、その中で安定的な成長かつ高収益を達成することは至難の業と思われる。
 
製品自体の性能はもはやそれほど急速に進化するとも思えず、性能面での差別化が難しく、ともすれば価格競争に陥りがちであろう。また、外食産業は企業の入れ替わりも激しく、格安な中古市場も拡大している中で存在感を示し続けることは簡単ではない。
 
そんな市場において同社が取っている戦略は、顧客のかゆいところに手が届くようなソフト面のサービス強化である。
 
同社において具体的に効果があった戦略の一つに地方自治体向けの販売活動として、見積書の提出促進がある。これは自治体の予算編成時期(9-12月)に前もって自主的に見積書を提出するものである。その中で、省エネや衛生管理などの最新の世間の動向を盛り込むことで、対応商品をPRするというものである。このような対応が、前期においても学校や病院老健などへの大幅な売り上げ増につながっていると考えられる。
 
また、営業をサポートする部隊も充実している。コンサル室では顧客である外食・中食点に調理・メニュー提案など顧客の課題のソリューションを提供する。また、スチコン、テストキッチンを利用した調理デモ活動も行っている。この辺りは、食品卸売業と全く同じようなアプローチである。当然、同社の場合は、直販であり、卸と同じ発想となるのであろう。
 
また、サプライでは新築物件におけるサプライ品の100%受注を目指し、営業部隊と緊密な連携を取っている。顧客にはその他、厨房の衛生管理をトータルに提案して、営業部隊をサポートしている。
 
なお、これまでは弱かった海外も、M&Aを通じて急速に売り上げを増やし始めた。海外で国内のように圧倒的な地位を築くのは時間がかかろうが、海外展開をすることで、実は国内営業のサポートにもなっているとのことである。つまり、海外の外食産業の事情が分かるようになることで、国内の外食産業が海外進出するときに同社に相談するという例もあるそうである。
 

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《有賀の眼》

こういった様々な取り組みが現在の同社の国内の強さを支えているということであろう。文中でも触れたようにこのような顧客へのサービスで差別化する考え方は、しばしばこのコラムで述べる加工食品卸売業のビジネスモデルと同じ発想と言えよう。

加工食品卸売業の場合、企業ごとに商品が違うわけではないので、まさにこのようなサポート機能が競争力の源泉となった。それでもそれに気づかない企業もある。それに対して、メーカーの場合、そのようなアプローチをしようという発想をする会社が少なく、実際にそのようなアプローチを行っている企業は本当に少数と思われる。おそらく、同社はそのような発想があったことから、今のような地位を築いたのではなかろうか。
 
ライバルから見れば、そんなことまでしなくてもいいだろうという意見が出そうなことである。しかし、そんな意見が出そうであればあるほど、差別化には効果があるという点でも優れたビジネスモデルだと考えられる。
 
こういった考え方は多くのビジネスにおいて非常に参考にすべき点が多いのではないかと思われる。
 

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