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愛読者通信

「世界で勝ち抜く 新・日本型《改善》」
柿内幸夫氏(柿内幸夫技術士事務所 代表)

「愛読者通信」著者インタビュー

 いま中小企業メーカーは、会社の体質そのものを、儲かるように改善することが強く求められている。価格競争に巻き込まれない、高収益体質への転換策を、メーカー指導No.1コンサルタントが語った。

柿内幸夫(かきうち ゆきお)氏
柿内幸夫技術士事務所 代表/改善コンサルタント/経済産業省 先進技術マイスター

高収益工場づくり・現場改善指導の実戦派コンサルタント。大中小企業の工場を幅広く指導。自ら工場に入り、現場の人たちと一緒に悩み、考え、改善を進める実践指導に、全国の社長・工場長はもとより、現場の人たちからも絶大な信頼がある。
著書に『最強のモノづくり』(御沓佳美氏との共著)、『“KZ法”工場改善』『儲かるメーカー 改善の急所〈101項〉』(共に日本経営合理化協会刊)などがある。

 

Q: 日本の大手メーカーが海外との競争で苦戦しています。現在の日本メーカー及びモノづくりをどう見ておられますか?

 まず何より申し上げたいのは、この苦境は必ず克服できるということです。例えるなら、いまの苦境は末期ガンではなく、ただの筋肉痛。つまり座して死を待つような絶望的なものではなく、日本のモノづくりがより高次のレベルに成長するための通過儀礼だという前向きな認識を持っていただきたい。
 その上で、日本のモノづくりが目指す「強み」を再定義する必要があります。かつて、「ジャパン・アズ・ナンバーワン」の時代には、日本製品の強みは性能が良く壊れないこと、つまり「機能性品質」にありましたが、いまや機能性というレベルだけなら、人件費の安い新興国で造られる製品と日本製に大差はない。
 では、これまでの強みが通用しなくなった今、日本のモノづくりの新たな活路は何かといえば、「まだ世にないものをつくる」「競合が誰もマネできないダントツ製品をつくる」です。非常にハイレベルですが、これをクリアした企業が勝ち残るのです。

 

Q: では、そういう状況の中で「現場改善」をやり続ける意味は何でしょう?

 ズバリ、「現場改善」こそ日本が世界で勝つための最強の武器です。ただし、「現場改善」の本来的かつ新しい意義を、経営者以下全社員が理解して実践することが重要です。
 そもそも「改善」とは、単なる作業効率を上げるアイデアや、利益を捻出するための合理化策ではありません。むしろ、会社全体の方向性を変えたり、体質を変えていく《考え方や思想》活動です。ですから、今後は現場改善の本来に立ち返り、従来のQCD(品質・コスト・納期)にとどまらない、全社を挙げて「売れるモノを造る」という、いわば衆知を集める改善を行なっていただきたい。
 じつは、こんなことは日本以外どこの国にもできないことです。アメリカやヨーロッパでは、設計やマーケティング部門の人が現場でワイワイガヤガヤと改善していくことなど絶対にない。現場の人間はとにかく仕様書どおりに製造する。個人の独創性など必要とされません。
 しかし、ホンダしかりトヨタしかり日産しかり、日本のメーカーは昔から当たり前のように設計の人間も購買の人間も、そして社長も現場に集まり、現物を前に「ああでもない、こうでもない」と議論を重ねたからこそ、世界を圧倒する凄いモノづくりができた。
 有名な話ですが、かつてホンダがイギリスのF1チーム・マクラーレンにエンジンを提供していたとき、設計担当者と現場のエンジニアが自由闊達に議論しながら作業する光景にマクラーレンの技術者が衝撃を受けて、「ホンダエンジンの圧倒的な強さの理由が分かった」と納得したそうです。
 すなわち、これが本来的な「日本型現場改善」であり、従来の機能性品質の向上から「独自の製品を造る」つまり魅力品質の追求という、より高次なレベルへの転換も、新・日本型「現場改善」ならば絶対に成しえるでしょう。

 

Q: 最後に、中小メーカーが今後も力強い存在であるために大事なことを、3つ挙げるとすると何でしょうか?

 第一に、「鳥の目、虫の目、魚の目を持つこと」です。
 鳥の目とは俯瞰(ふかん)、要するに「一部門だけでなく全社的に見る」「発注先ではなく最終消費者を見る」等、広い視野で物事を判断することです。
 虫の目は、些細なことを見逃さない、細心の注意を払って見るということです。たとえば、ボルトが外れていたら、実際にその現場を見ずして有効な策は講じられません。だから、地をはう虫のように、観察する目が必要です。
 魚の目は、魚が河の流れに逆らわずに泳ぐように、環境に対応すべく常に先を読むということです。
 第二は、「常に勉強すること」です。
 過去の経験だけに答えを求めると、絶対に判断を誤ります。だから、新しい知識を貪欲に吸収してください。
 第三は「とにかく実行する」。できない理由を考える前に、実施できる手段を講じてください。当たり前のはなしですが、実行せずして新しい付加価値は生み出せません。
 改善に終わりなし、打つ手は無限です。

 

(聞き手/高橋悦子)

「愛読者通信」(2012年7月)掲載

【日本経営合理化協会 YouTube Channel】
[欧米の流行に惑わされるな!]改善の急所|2022年の2大テーマ《柿内幸夫》

https://www.youtube.com/watch?v=xmj_Ar16_Bo

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