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講師インタビュー【ホールディングス化を活用し、経営メリットを最大化!】江幡吉昭氏

ビジネス見聞録 経営ニュース

「賢いホールディングス化戦略」音声講座の発刊にあたり、江幡吉昭講師に「ホールディングス化の失敗事例に学ぶ、中小オーナー社長が気をつけるべきポイント」をお聞きしました。■江幡吉昭氏(えばた よしあき)氏/アレース・ファミリーオフィス代表取締役
 上場、非上場を問わず、オーナー企業の会社を守りながら伸ばし、賢くお金を残す資産管理のプロとしてファミリーオフィスサービスを提供。大学卒業後、住友生命保険を経て英国スタンダードチャータード銀行にて最年少シニアマネージャーとして活躍。2009年、富裕層の資産運用、事業承継、税務、財務管理を行う「アレース・ファミリーオフィス」を設立。主な著書に『金融資産一億円!インフレ時代の投資術 ―銀行・証券会社にたよらないお金持ちへの道』『資産防衛の新常識』ほか。

 

まず、ホールディングス化とは何か、また、そのメリットについて教えてください。

 ホールディングス化とは、複数の事業を管理するための親会社を設立し、各事業を子会社として持つ仕組みです。

 グループ全体で利益を最適化できるため、多くの経営者が節税目的でホールディングス化を考えていますが、税務面以外にもさまざまなメリットがあります。

 組織力の強化をはじめ、事業部門の効率的な運営や後継者育成、さらには事業承継を円滑に進める上でも有効です。特に中小企業の経営者にとって、ホールディングス化は「さらなる成長のためのステップアップの仕組み」と言えるでしょう。

 事業承継がスムーズに進み、各事業を独立した形で評価、管理できるようになることで、会社の長期的な安定を図ることができます。

 

誤ったホールディングス化は組織を弱くする

ホールディングス化には、様々なメリットがある一方で、うまく活用できてないケースがあります。実際の失敗事例を教えてください。

 ホールディングス化の際に最もよく見られる失敗事例は、「融資によるホールディングス化でキャッシュフローが悪化すること」と「後継者問題の先送り」です。

 たとえば、節税目的でホールディングス化をしたものの、親会社が銀行から借り入れをして事業会社の株式を購入した場合、事業会社の業績が悪化すれば、融資の返済に困窮する事態になりかねません。たとえ事業会社の業績が順調でも、多額の借り入れを残したまま事業を後継者に引き継ぐことになってしまいます。

 実際、銀行融資でホールディングス化をした神奈川県の自動車部品の下請け企業では、関税等の外部環境の変化により、リストラを進めています。融資の返済手段に困っている状況が見られます。

 また、「後継者問題の先送り」について、後継者が決まらないままホールディングス化を進めてしまうと、結局は事業承継がうまくいかず、ひどいケースではホールディングスの親会社の株式も現経営者が保有し続け、事業承継自体も出来ていないケースも散見されます。

 このように後継者選定が進まないまま経営が続いてしまうと、後継者の育成ができず、事業承継が難しくなることも少なくありません。

 

社長が知るべきホールディングス化の真実

 こうした失敗は、銀行や会計顧問の助言だけに頼ることで起こることが多く、経営者自身が制度や仕組みを理解し、将来の経営体制を見据えた計画を描くことが重要です。

 私も元銀行員なので、銀行側の理屈もわかります。銀行にとっては多額の融資が実行出来るので、ホールディングス化を勧めたい、しかし本質的には「後世に借金を残すだけ」であるので、融資に頼るホールディングス化はしない方が良い。だが、会計顧問の税理士先生にとってもホールディングス化は何が良いのかよくわからない。よって銀行が主導で進めてくれるのであれば「よくわからないし、忙しいし、得意分野ではないので、まあいいか」となってしまいます。

 事業の世界は「九勝一敗でも、その一敗ですべてを失う」世界です。ホールディングス化のための融資などの「売り上げにつながらない融資はやはりしない方が良い」という結論に至ります。

 

失敗を回避するカギは「セカンドオピニオン」

ホールディングス化の失敗を回避するために、どのようなことに気をつけるべきですか?

 失敗を回避するためには、やはり私たち自身の健康問題と同じですが、セカンドオピニオンを取ることと、一石二鳥、三鳥を最初から狙いに行くことです。

 銀行から話を聞くことは大切ですが、それ以外の視点を持つ専門家からのアドバイスは必須でしょう。会計顧問の税理士先生もホールディングス化について詳しければいいのですが、そうでなければ積極的に外に情報を取りに行くべきです。

 また、ホールディングス化を進める際には、税制の最適化はもちろんのこと、それだけで終わってはいけません。事業会社ごとのさらなる成長と、最終的には後継者問題がクリアになるような、将来の経営体制を見据えたシナリオを描くことが、ホールディングス化成功へのカギとなります。

 

成功事例から学ぶホールディングス化の効果

ホールディングス化を活用して成功した事例について教えてください。

 ある遊技業のクライアントでは、ホールディングス化によって3つの課題を解決し、成功を収めました。

 一つ目は、複雑な株主構成の整理です。長年の事業運営で複雑化していた株主の問題を、ホールディングス化によって集約し、シンプルにしました。

 二つ目は、創業者の自社株対策です。多額の自社株を保有していた創業者の相続税負担を、組織再編によって軽減しました。

 三つ目は、グループ全体の適切な利益配分です。主力事業の利益をグループ全体に再配分することで、各子会社の成長を加速させ、経営資源を効率化させることができました。

 その結果、ホールディングス化は、後継者が事業ごとに独立して経営する体制を整え、スムーズな事業承継を実現しました。

 

ホールディングス化を考えている社長は、まず何から始めればよいでしょうか?

 まずは、現在の事業構造や経営状態を見直し、ホールディングス化が本当に必要かを判断することです。その上で、融資に頼ることなく、実現可能な形でのホールディングス設立プランを立てましょう。

 また、後継者の選定や育成計画についても並行して考えることが重要です。「銀行様の言うことに間違いはない」というような盲目的な銀行信奉はやめた方が良いです。

 インターネットで何でも情報が取れる時代ではありますが、このあたりのジャンルに関しては正直、ネットには載っていない情報で、実務をこなせる専門家も少ないニッチな分野です。自ら積極的に情報を収集し、信頼できる専門家を見つけることが、成功への第一歩です。

 

正しく持株会社を構築し経営のメリットを最大化

 ホールディングス化を検討しているが、実際にどのように進めるべきか不安な社長や、事業承継の問題に直面している経営者はぜひ今回お話ししました『賢いホールディングス化戦略』特別講話を参考にしてみてください。

 また、億単位の借り入れでホールディングス化をしようとしている方は、セカンドオピニオンとしてこの講話を活用ください。

 そして何よりも自社株対策や、節税対策としてホールディングス化を考えているが、実際の制度の活用方法に悩んでいる経営者にも、非常に有益な情報を提供できると思います。

 

最後に、この講話を聞かれる社長にメッセージをお願いします。

 ホールディングス化は決して一朝一夕で完成するものではありませんし、各社どのような形でホールディングス化するかは正直オーダーメードなもので、千差万別です。よって画一的な正解がない世界のため、実際の現場では、多くの企業が「とりあえずホールディングス化をやってみた」で終わっているケースが非常に多いです。

 自社の現状と強み、将来を分析したうえで計画を立て、実行することがビジネスの強化につながります。ホールディングス化は、企業を次世代に繋ぐための最良の選択肢であることは間違いありません。

 この講話を通じて、より多くの社長が正しいホールディングス化のやり方を理解し、成功への第一歩を踏み出していただければ嬉しく思います。

ビジネス見聞録WEB 2025年10月号 目次
p1 収録の現場から 〈大竹愼一「2025年 秋からの最新経済予測」音声講座〉 
p2 講師インタビュー【HD化を活用し、経営のメリットを最大化せよ!】江幡吉昭
p3 今月のビジネスキーワード「建設業界の2025年問題」
p4 令和女子の消費とトレンド「“夏拡張”で変わる令和女子の消費動向」
p5 展示会の見せ方・次の見どころ

今月のビジネスキーワード「建設技能者の2045年問題」~中小経営者への影響と対策~前のページ

3分でつかむ!令和女子の消費とトレンド/【第17回】“夏拡張”で変わる令和女子の消費習慣次のページ

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