2019年8月に発売した『100億マニュアル』は、2万円という高額にもかかわらず、同年年間ベストセラーになり、全国の経営者から「価値ある本!」として絶賛されています。本書を監修された橋本陽輔氏に、企画と狙いについてお話をうかがいました。
■監修者/橋本陽輔(はしもと ようすけ)氏
増客リピート指導の実務専門家として活躍。著書『社長が知らない秘密の仕組み』は、6か月連続アマゾン総合ベストセラー入りし、発刊から10年以上たった今も、リピーター顧客倍増のバイブルとして高く評価されている。
Q:書籍「100億マニュアル」の監修者を引き受けた理由は何ですか?
今後の日本にとって、もっとも大切なのがイノベーションの創出です。
これは、さまざまな分野にわたって言えることですが、企業にとってもイノベーションが創出されない組織は衰退するしか道は残されていないと思えるほどです。
とくに企業の場合、売り物である商品・サービスが他社とまったく同じものを売っていては、早晩、価格競争になるのは自明の理であり、売上ダウンは避けられないでしょう。
ただ「イノベーションを起こす」と言うだけなら、誰でも言うことができますが、「どうやって起こすのか?」については、なかなか明確な答えがないというのが現状です。
しかし約10年前に、この「イノベーションを起こす」ということについて道筋を示すことができる人物に、わたしは出会いました。
それが、梅澤伸嘉先生です。
梅澤先生は、かつてスカウトされた会社で独自の方法で商品を25個つくり、同社を10年で売上40億円から600億円へと急伸させたという驚異的な実績をもっておられます。
「トニックシャンプー」「スキンガード」「カビキラー」「写るんです」「禁煙パイポ」など、イノベーティブな商品を意図してつくる商品開発の権威として知られています。
この驚異的な実績をお持ちの梅澤先生のノウハウの中に「イノベーションを起こす種」が多く潜んでいることがわかったのです。しかし残念ながら、今までの梅澤先生の既刊本は、「イノベーションを起こす」という観点からみると、小学生に「いきなり高等数学を教える」ような理論的かつ複雑な内容で、これでは中小零細企業が「イノベーションを起こす」スタート地点にも立てない可能性があると感じていました。
「高等数学を教えたい、もしくは伝えたいのであれば、まずは数字の数え方、そして足し算から教えなければいけない」
つまり、すでにその道を通った経験者にとっては当たり前すぎることであっても、「1+1は2」という初歩から教えなければ大事なものは伝わらないということを既刊本の製作陣は理解していなかったのではないかと思うことが、今回、監修をお引き受けしようと思った”きっかけ”でした。
この点について、すでに明確に理解していましたので、監修者として、私がその役割を担うことはできると思っていました。
そこで編集長に上記の点とともに、『100億マニュアル』の構成案、さらに、このようにすれば売れる本になるという提案をさせていただき、この書籍の製作をスタートしました。
では、どこが「1+1は2」の部分なのかと言えば、【商品コンセプトのアンケート】の部分です。
なぜなら、わたしもその一人ですが、日本経営合理化協会の書籍を愛読する読者が求めていることは、理論・理屈よりも「実践」だからです。
梅澤理論がいかに「実践から出た理論」であると謳(うた)っていても、その「実践部分」のハウトゥをカットしてしまっては、読者が臨場感を感じないであろうことは目に見えていました。
だからこそ、この商品コンセプトのアンケートの部分を「実際に読者ができる」レベルまで細かく噛み砕き、まずは読者の商品が、どのくらいの需要があるのかを実際に「試してもらうこと」から書籍をスタートすることにしたのです。
わたしの構成のアイデアに対して、『100億マニュアル』製作当初、梅澤先生は「大事なのは理論であって、アンケートなどは重要ではない。なぜ、それを書かないといけないのか?」と懐疑的であられたのですが、今の書籍の売れ行きをみれば、それが非常に重要なセンターピースであったことがご理解いただけるのではないかと思っています。
また本書は、はじめて梅澤理論を実際に書籍(出版)に使い、商品開発しました。
つまり、出版においても商品開発のノウハウを使ってみました。
『100億マニュアル』という書籍のテーマ・タイトルを決める時も、商品コンセプトテストや表現コンセプトテストを繰り返しおこない、その分析の結果からシステマティックに決定しました。
その結果、発売前の時点で、ある属性の経営者であれば「4人に1人は購入する」ということが「事前にわかっていて発売された」のが本書なのです。
そして、その通りに、今も順調に売れ続けています。この結果に、わたし自身、梅澤理論の素晴らしさに身震いしたほどです。
このような製作過程の体験を通じて、わたしが今思うことは、ぜひ読者の皆様には、この書籍のマニュアルどおりに自社の商品製作をしていただきたいということです。 今までノウハウとして社外秘とされていた部分や梅澤先生の心の中にだけあった基準値も含め、本書では「すべて公開」しています。
そのまま実践すればベストセラー&ロングセラーになる商品開発ができるように、本当にすべてを出し切ったのが本書です。
おそらくコンサルティングを依頼すれば、最低でも300万円以上はかかるでしょうし、たとえコンサルティングを受けられたとしても、本書のアンケート法などは、手品師で言えば手品のタネにあたるもので、ふつうは分析結果だけで非公開のものでしょう。
それは一般書で既出のP&G卒業生の方の本をみればわかることかと思います。その「隠されたもの」をすべて公開してくださったわけですから、ぜひ御社内でマニュアルとして活用いただきたく思っています。
『100億マニュアル』共著者 梅澤伸嘉(うめざわのぶよし)氏(2021年3月逝去)
Q:書籍「100億マニュアル」の特徴をあげていただけますか?
本書の特徴として、さらに、やずや大番頭の西野博道先生の「ダイレクトマーケティング」のノウハウを組み合わせたことで「2年で10億円、5年で100億円への過程」を明確に示すことができました。 西野先生は、健康食品で有名な「やずや」の創業者の右腕として、経営企画・広告マーケティングを担い、同社を少ない人数でわずか3年で売上20億円から100億円へと導いた立役者であり、国内の通信販売業界では知らないものはいないといわれる伝説の人物です。
『100億マニュアル』共著者 西野博道氏
さきほどの梅澤先生と同様、通販業界のレジェンドとして有名な方ですが、この通販の「ダイレクトマーケティング」のノウハウを商品力に加え、販売力として組み合わせることで「2年で10億円、5年で100億円」を達成できる方法論。 さらに言えば、その方法論を手順書のレベルにまで落とし込んだことが他著との明確な違いではないかと思います。
さきほども触れましたが、近年ではP&G卒業生の方のマーケティング本が売れているようです。
しかし、その大半が商品コンセプトのアンケート部分の梯子が外された状態なので、中小零細企業では「実践したくても実践できない」という会社も多いと聞いています。
そんな会社にとっては、『100億マニュアル』の商品コンセプトのアンケート法の公開は福音となるでしょう。
もちろん、商品コンセプトのアンケート法を実践した後に、P&G卒業生のマーケティング本を読めば、さらに内容がよく理解できるはずです。
そういう意味でも、まずは、本書『100億マニュアル』を読み、その後に、他著を読むことをおすすめします。
冒頭でも述べましたが、本書は、「イノベーションを創出する」ための最初の一歩となるようにつくりあげました。もしも、あなたの会社が「自社にイノベーションを起こしたい」と思っておられるのであれば、『100億マニュアル』を社員様と一緒に読むことをおすすめします。
そこに机上の空論は一切ありません。すべて手順書としてステップバイステップで書かれています。あなたの会社が「イノベーションを起こす」一歩を踏み出し、「2年で10億円、5年で100億円を超える」ことができますことを心から願っております。
(聞き手:岡田万里)
「愛読者通信」(2020年4月)掲載