あたまが真っ白にならない対応
クレーム対応は最初の対応がもっとも大切だというお話から、お申し出者の思いに立った対応を
言葉でたっぷり表現することや、自分がこの仕事により達成感を感じるための工夫なども説明
してきましたが、これはすべて、お申し出者が正しいお申し出者であり、あなたもまだ少し気持ちの
余裕がある相手のときに最高の結果を招いてくれる工夫です。
ところが、いつもと勝手がちがう場面での対応や、お申し出者が非常に厳しい方であったり、
言葉が乱暴な方であったり、要望が理不尽である方の場合は、ほとんどの対応担当者は
頭が真っ白になるものなのです。
ご多分にもれず、私もそのひとりです。日頃ならうまく対応できるものも頭が真っ白に
なったがために本領発揮できず、それどころかドジを踏むということになるのです。
そこで、そんな一層緊張する場面での対応力を上げるために、
知っておいて損はないことを紹介しましょう。
1.お申し出者のお家でガチガチにならないための訪問対応
クレーム担当者にかかわらず、営業の方や、販売店の店長がお申し出者のお宅まで、
現品をいただきに行かなければならないこともあります。そんな時にオドオドせず、
しっかりと真面目に誠意があり、お任せしても信頼できる人と感じていただくことに失敗しないために、
訪問したときにやってはいけないマナーをお教えしますね。
【1】奥様おひとりのところに伺うなら女性担当者。原則はふたりで
お申し出者のお家におじゃまするのは、主に男性担当者であることがこれまでのクレーム処理の
慣習ですが、私は、お申し出者が女性の場合の訪問は女性担当者であるべきだと強く言いたい!!
考えても見てください。私が申し出者だったなら、自分ひとりで在宅している家に
これから企業の男性担当者が訪れるんだと思うと、また実際、男性担当者が
訪れることは、すごく気持ちの負担になります。
昼間は、だいたいが奥様おひとりでご在宅というケースが多く、
近頃は高齢の女性ひとりでご在宅というケースも少なくありません。
また、若い女性のひとり暮らしのお家にお伺いしなければならないことも多いのです。
そんなお申し出者方のライフスタイルに合わせることを考えると、企業側は女性担当者の
訪問体制に重きを置くことが急がれます。
これまで訪問業務を女性担当者が行うことが主体と考えられていなかった根拠は、
(1)精神的負担が重すぎる
(2)業務拘束時間の問題
(3)お申し出者の信頼度の問題
(4)女性人員不足
(5)危険性の危惧 ということにありました。
しかし、(1)については、仕事の中では男性職員が女性職員の精神的負担をあえて担う必要はありません。
(2)については近頃では企業の姿勢として受付時間や対応時間の枠がはっきりと決まっていますから、
たとえ男性職員でも業務時間外のお申し出者への対応はお断りしていいのですから、
この問題は問題にはなりません。万一、対応時間外に急遽対応しなければならいことが
発生した場合は、臨機応援に対応すればいいのですから。
(3)については、クレーム対応に関しては女性職員だから頼りなく、男性職員だから頼り甲斐がある
という根拠のほうが弱い時代になりました。現に以前から比べて「男性に代わりなさい!」という言葉を
投げかけられることはずいぶん減ってきたのも一般的な意識の変化の表れだと言えます。
(4)の、お申し出者のお家に行かせるにも、女性職員が出かけると、社内のほかの仕事が
停滞してしまうという悲鳴もよく聞きますが、それは、女性職員にも訪問対応の業務を定義づける
というのであればそのような人員構成に基づいた人員数の確保と配置をすればいいことなので
すぐに解決する問題です。
そうはいっても、いまだに乗り越える対策にメドがついていないのは(5)の危険性。
この危険性はズバリ言って、お申し出者が女性への興味が高い場合とか、人間的に
危険性が高い人物が腕力で動きを抑制した場合に抵抗するには力不足である実情を
かんがみて、危惧を抱いてきたということです。
これは、ペアを組んで複数で伺うことによって免れる可能性が高い。
ということで、女性職員を訪問対応の主体としないという慣習は
お申し出者の思いに応えることを考えると回避できないと思います。
お申し出者が女性の場合は、女性担当者2名で、
お申し出者が男性の場合は男性担当者と女性担当者のペアで訪問をするのが、
お申し出者にとっても、対応担当者にとってもにベストだと思います。
もっとも避けたいのは、女性のお申し出者宅に男性担当者が2名で伺うこと。
お申し出者にとってその威圧感や恐怖感はこちら側の想像以上のものです。
また、2名以上、つまり3名などの大人数で伺うのも好ましくありません。
なぜなら、あなたのターゲットはお申し出者でなく同行している者たちに意識は移行してしまいます。
現実的には、“このお返事で大丈夫かなあ?あとで部長に叱られるのと違うかなあ”と、
自分のお申し出者への返事が同行者に賛同を得るものかどうか気になってしかたなくなります。
その挙句、お申し出者に好ましいお返事が見つからなくなって、2次クレームへ発展してしまった
という失敗体験者はたくさんいます。
中村友妃子
【出所・参考文献】
『クレーム対応のプロが教える“最善の話し方”』(青春出版社刊)