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採用・法律

第10回 『平成→令和に改元!賃貸借契約書も改定!?』

中小企業の新たな法律リスク

 新年度を迎えた2019年4月1日に新元号「令和」が発表され、本記事掲載時点で平成も残りわずかとなりました。改正民法(債権法改正)についても、施行日である令和2年4月1日まであと1年を切ったということになります。そんな折、不動産賃貸業を営む山形社長が民法改正について聞くために賛多弁護士を訪れてきました。
* * *
山形社長:平成は激動の時代でしたが、賛多弁護士のおかげで何とか商売を続けられてきました。令和になってもよろしくお願いしますね。
 
賛多弁護士:はい、もちろんです。弁護士にとっても、色々な法律が改正されたり法曹養成制度が変わったりして、まさに平成は激動の時代でした。法改正といえば民法が120年ぶりに大改正されます。新元号ですと令和2年4月1日から施行されますから、もう1年を切ったということになりますね。
 
山形社長:聞くところによると、債権法分野が大きく変わるそうですね。我が社のような不動産賃貸業には何か影響があるのでしょうか?何か対応すべきことはあるのでしょうか?
 
賛多弁護士:不動産賃貸業に対しても大いに影響を及ぼすでしょう。大きな点としては、個人が借主の連帯保証人となる場合、連帯保証人が責任を負う限度額が連帯保証契約の書面上に記載されなければならなくなったことですね。この限度額を「極度額」といいますが、書面にこの記載がないと、連帯保証人になる約束が無効になってしまいます。つまり、いくら連帯保証人に同意してもらい判子を押してもらっても、法律的に連帯保証の意味はなくなってしまうのです。
 
山形社長:それは重要な改正ですね。たしかに今までは極度額というものは書面上には記載していませんでした。極度額の定め方次第では、連帯保証に躊躇して連帯保証人のなり手がいなくなる可能性もあるので、保証会社をより活用しなければならなくなりますね。
 
賛多弁護士:極度額を極端に高額としてしまうと、公序良俗に反して連帯保証契約が無効となる可能性もありますから、極度額の設定は難しいところですね 。
 
山形社長:敷金、保証金の額にも影響が出てきそうだなぁ。
 
賛多弁護士:ところで、山形社長の会社では、事務所や社宅等、事業用に賃貸する物件も多く取り扱っていますね。
 
山形社長:ええ、それらの物件の賃貸についても何か改正があるのですか?
 
賛多弁護士:はい。事業用物件の借主の委託を受けて連帯保証人となった方に対しては、借主は、自身の財産・収支状況、賃料債務以外の債務の状況、他の担保の有無を説明しなければならなくなりました。
 
山形社長:借主の未払いリスクを連帯保証人が契約時に把握できるように改正されたのですね。貸主としてはどうすればよいのですか?
 
賛多弁護士:「借主が負う説明義務を果たしていないこと」について貸主が知っていたり、知らないことにつき過失があったりした場合には、連帯保証契約が取り消される可能性があるのです。ですから、借主から説明を受けたのかを把握するため、連帯保証人にはチェックリストに署名を頂くことが考えられますね。きちんと説明したとの確約書を借主から出してもらうことも重要でしょう。
 
山形社長:なるほど、連帯保証人を付けるだけでも対応することが増えそうですね。
 
賛多弁護士:保証だけでなく、賃貸借関係そのものに関する規律においても改正点が多数ありますよ。例えば、現行法では借主の過失によらないで物件が滅失した場合に借主からの請求があって初めて賃料が減額されることになっていますが、改正法では、滅失以外の理由で物件が使用収益できなくなった時も賃料が減額される場面として規定されました。しかも、借主の請求なくして当然に減額がなされてしまうのです。
 
山形社長:そうすると、権利意識の高い借主からは賃料の減額や返還を求められることが増えるかもしれないな。物件のメンテナンスは常日頃から徹底することが大事になりそうだ。
 
賛多弁護士:そうですね。紛争回避のために、事前予測可能な範囲で、使用収益ができなくなる場合を明確にしたり、減額割合、金額等を定めたりしておいてもよいかもしれないですね。修繕が必要になりそうだと借主において判明したら、貸主への通知を義務づけるといった条項を入れておくことも考えられます。
 
山形社長:いやぁ、これまでうちの会社で使っていた契約書では改正民法に対応しきれないと感じました。施行まで1年を切りましたし、そろそろうちの契約書の改定もお願いします。
 
* * *
 
 賛多弁護士が説明した保証分野については、保証人保護の観点から特に大きく改正された分野です。賃貸借関係については、貸主と借主の間の規律をより明確にした改正が多いのですが、消費者である借主にとって過度に不利な条項を設けてしまえば、消費者契約法上無効とされる可能性もあります。改正法施行後に生じうる不動産賃貸のリスクは、紛争場面から逆算して予防すべく、弁護士等の専門家に相談して改定してもらうことをおすすめします。
 
 
極度額の金額、賃貸借契約書の条項については、国交省HPで公開されている「賃貸住宅標準契約書」、「極度額に関する参考資料」が参考になります(http://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/jutakukentiku_house_tk3_000023.html)。
 
執筆:鳥飼総合法律事務所 弁護士 古橋 翼
 

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