近年、『教養としての~』といったタイトルの本が、目に付きます。
ビジネスマンを中心に、グローバルスタンダードの教養への関心が高まり、
書籍の点数にも反映されていることと思われます。
数ある『教養としての~』本の中で、特に印象に残っているものの1つが、
『教養としての「世界史」の読み方』(著:本村凌二)
です。
著者の本村氏は、東大名誉教授でローマ史研究の第一人者。
本書の冒頭に、
私はグローバルスタンダードの「教養」は、「古典」と「世界史」だと思っています。
との一文があります。
そして、古典を読む意義には触れているものの、世界史中心の内容で、
古典については、ほとんど書かれていませんでした。
しかし、
私はこれまでの人生で多くの本を読んできましたが、深く心に残っているのはいずれも古典の名著と言われているものばかりです。
との記述もあったことから、ぼくとしては、本村氏による『教養としての古典』のような
感じの本が出ることを期待していましたが…
先日、書店でそれらしきものを発見!
それが今回紹介する
『20の古典で読み解く世界史』(著:本村凌二)
です。
20の古典で読み解く世界史
古典を読むことの意味や価値は、数え切れないほど見聞きしたことがあるかと思います。
しかし、「どれを読めばいいのかわからない」という声もよく聞きますので、
本書の選書は、実に興味深いところです。
一体どんな本が、どんな基準や意味合いで選ばれたのか?
日本を代表する歴史家が選んだ20冊の古典、以下になります。
1.イリアス/オデュッセイア(著:ホメロス)
2.史記列伝(著:司馬遷)
3.英雄伝(著:プルタルコス)
4.三国志演義(著:羅貫中)
5.神曲(著:ダンテ)
6.デカメロン(著:ボッカッチョ)
7.ドン・キホーテ(著:セルバンテス)
8.アラビアンナイト(著:作者不詳)
9.ハムレット(著:シェイクスピア)
10. ロビンソン・クルーソー(著:デフォー)
11. ファウスト(著:ゲーテ)
12. ゴリオ爺さん(著:バルザック)
13. 大いなる遺産(著:ディケンズ)
14. 戦争と平和(著:トルストイ)
15. カラマーゾフの兄弟(著:ドストエフスキー)
16. 夜明け前(著:島崎藤村)
17. 山猫(著:ランペドウーサ)
18. 阿Q正伝(著:魯迅)
19. 武器よさらば(著:ヘミングウェイ)
20. ペスト(著:カミュ)
時系列に従って並べられた、まさに古今東西の名著の数々。
各作品のあらすじはもちろんのこと、書かれた当時の歴史的背景、
さらには歴史家である著者による「歴史家目線での解説」が特筆もの。
まだ読んだことがない本は興味をそそられ、
既読した本は、理解が深まり、関心の枝葉が伸びていきます。
時節柄、ロシアのトルストイによる『戦争と平和』や、ドストエフスキーの『カラマーゾフの兄弟』は、気になるところ。
個人的には、日本から唯一選ばれている島崎藤村の『夜明け前』、特に楽しく読みました。
本書を読み、続いて古典の名著を読めば、この上なく意義ある読書にはるはずです。
グローバルスタンダードとしての教養の充足、
時代を読む目、歴史を見据える目も鍛えられるこの一冊、
ぜひとも読んでみてください。
尚、本書を読む際に、おすすめの音楽は、
『トミー・フラナガン・トリオ』(演奏:トミー・フラナガンら)
です。
トミー・フラナガン・トリオ
グラミー賞に4度ノミネートされた、名ジャズ・ピアニスト、トミー・フラナガンの代表作。
バラードを中心とした繊細かつ骨太な、歴史に残る名演、
本書と合せてお楽しみいただければ幸いです。
では、また次回。