前回のコラム執筆後、2週間ほどボストンに飛び、
ハーバード大学の大学院にて聴講生として
新たな学びに励んできました。
ハーバードでの経験や学習の成果を
いずれお伝えできればと思いますが、
まずは、ボストンに関連する2人の巨匠による一冊を紹介します。
『小澤征爾さんと、音楽について話をする』
"世界のオザワ"こと、偉大なる指揮者・小澤征爾さんに
人気作家・村上春樹さんが迫る対談集です。
2人を結ぶキーワードとなるのが
音楽とボストンです。
小澤さんは、ボストン交響楽団の音楽監督として長きにわたって活躍し、
ボストン市民に愛され、さらには世界中から敬意を集めています。
村上さんは、文壇きっての音楽愛好家として知られ、
とりわけジャズとクラシックに精通しています。
また、ハーバード大学で日本文学を教えていたこともあり、
ボストン交響楽団の演奏会にも何度となく通っているとのこと。
そんな音楽と文学を代表する二人による対談ですから
"眼と耳で楽しむ読書術"としては
決して避けて通れない本、とも言えます(笑)
本書の一番の特徴は、
書名のとおり、音楽についての話ということです。
「小澤征爾という人間像に深く鋭く切り込むことを目的として
なされたものではない」
という村上さんの記述そのもの、
徹底的に音楽談義!
よくありがちな、畑違いの達人同士による
人生談や成功の秘訣を語るようなものではありません。
ゆえに、"始めに"を読むと、音楽好きには喜ばしく、
ビジネス書ファンはガッカリしたかもしれません。
実際、クラシックのアルバムを聴きながら
曲について、さらにはカラヤンやバーンスタイン、グールドら
指揮者、演奏家についてのエピソードが続きます。
しかし!
ひたすら音楽について語り続けられる中で
道を究めた人にしか見えない世界、生き様が
随所に浮かび上がってきます。
読み進めるほどに、
仕事に人生に役立つことが
1つ1つあなたの手に落ちてくることでしょう。
小澤さんが世界のオザワたりえた理由、
村上さんが常にベストセラーになる理由も
見えてくるはずです。
375ページという分厚い本ですし、
中身も濃いので、読破するのはラクではないと思います。
読んですぐ何かの効果が出る、
といった類の本でもないかもしれません。
でも、後からじわじわと効いてくるタイプの本です、これは。
読んでよかったなぁ、と思う日が必ずきます。
ぼく自身についても、5年後、10年後に読み返したら
今以上に得られるものがある、と確信しています。
ぜひ手元に置いて楽しんでいただきたい一冊です。
尚、本書を読む際にオススメの音楽は、
せっかくですので、文中で話題に取り上げられたものから
選んでみましょう。
2つあります。
1つは、カラヤンとグールドによる、ベートーヴェン「ピアノ協奏曲第三番」。
ベートーヴェン:ピアノ協奏曲第3番&シベリウス:交響曲第5番/amazonへ
もう1つは、バーンスタイン指揮による、マーラー「大地の歌」です。
マーラー:交響曲「大地の歌」/amazonへ
マーラーは歌ものなので読書にはどうかな、と思ったのですが
意外にもいい感じで気持ちよく読めました。
カラヤンとグールドの共演については、
本書を読む前、読んだ後にそれぞれこの曲を聴くと、
また違った楽しみ方ができると思います。