先週開催された「第146回全国経営者セミナー」に行ってきました。
特に印象に残ったのは、野球のWBC優勝監督である栗山英樹氏の講演。
内容的には、この春、日本中を熱狂させたWBCについての話が中心。
監督だから知っている貴重なエピソードが聞けたのも楽しかったですが、それ以上にトークの上手さ、言葉の引き出しの豊富さに非常に感銘を受けました。
読書家というウワサは耳にしていましたが、想像以上!
極めて勉強熱心なことがストレートに伝わってきて、響くものがあります。
そんな栗山氏の真骨頂が発揮されているのが、今回紹介する
『栗山ノート2 世界一への軌跡』(著:栗山英樹)
です。
本書は、11万部を超えるベストセラー『栗山ノート』の続編。
WBC日本代表監督に任命されてから優勝するまでの日々を、古今東西の名言を織り交ぜながら、克明に綴ったもの。
アメリカとの決勝戦での大谷選手とトラウト選手の夢の対決、メキシコとの準決勝での村上選手のサヨナラヒットなど、感動の名場面の数々。
無念の出場辞退となった鈴木選手や栗林選手の件など、ベンチ裏での出来事の数々。そして、それぞれの場面における栗山氏の葛藤や思考。
読み応え十分の話題に、「四書五経」などの古典を始めとする先人の教えが見事に引用されて、より深みが増す構成になっているのが、特筆すべき点です。
楽しめるのと同時に、いろいろ考えさせられる内容になっていて、編集の巧みさに唸らされます。
栗山氏はいかに選手たちの心を動かし、優勝に導いたのか?
一体どんなことを考えてきたのか?
栗山氏の思考を象徴しているのが、
第5章の「至るを知りてこれに至る、ともに幾を言うべきなり」(『易経』)です。
「わずかな兆しを見逃さず、それが何を意味するかを読み解き、全体像に当てはめ、次の一手を見つける」
試合が進んでいく中で、瞬時の判断が求められる監督の仕事が、実に簡潔に記されていますが、これは経営者やリーダーにも求められるもの。
その大前提として、
「一旦、事が起こった場合には、身を持って部下をかばうだけの一片の侠気ともいうべきものがなくてはならぬ」(森信三氏)
といった名言の引用からも、トップとしての心構えが強く感じられます。
改めて、栗山氏ほど経営者に通じる部分を持った指導者は、そうそういません。
楽しく読めて、ヒントにも刺激にもなる経営書、と呼んでもいいくらいの充実ぶりです。
もちろん、WBCの感動が蘇る!
いや、ますます心が熱くなるはず。
さまざまな意味で、今すぐ読むべき一冊!
尚、本書を読む際に、おすすめの音楽は、『なつかしい未来』(音楽:さだまさし)
です。
栗山監督とも親交のある、さだまさし氏のデビュー50周年記念アルバム。
WBS優勝ソングで、栗山監督もコーラスとして参加した「マイアミの歓喜もしくは開運」も必聴です。
合わせてお楽しみいただければ幸いです。
では、また次回。
※本コラムでご案内の「栗山ノート2」著者 栗山英樹氏から、弊社出版物 「人の用い方」書籍と「人の用い方」講演CD版・デジタル版を推薦いただきました!
監督の仕事は、選手の心を動かし、勝利の高みに導くことです。人をいかに用いて、信頼感を高めるか―――
その答えを求めて、私は井原さんの「人の用い方」のCDを5年間、毎日球場までの往復2時間、車の中で聴き、本をカバンに忍ばせていました。選手は勝利のために厳しい練習をしているわけですから、私は素振りの代わりが勉強だと思っています。