東日本大震災以来、円は、米ドルやユーロ、資源国通貨などに対して記録的な超円高の状態にあります。「欧州の金融危機が世界経済に大惨事をもたらす」という懸念が払拭されない限り、比較的安全な通貨と考えられている円やスイスフランに世界中の資金が逃げ込んできます。欧州の政府債務問題が、抜本的に解決されるまでには数年かかると見込まれ、その間にどこまで円高が進むのか?誰にも見当がつきません。
その一方で、日本の財政悪化や人口減少、これを原因とする国力衰退問題を考慮すると、円が中長期的に買われる理由がないことは、日本人ならずとも世界の見識ある人々にとって周知の事実です。金融市場の変動はしばしば過剰反応のことがあり、現在の超円高も振れ過ぎた振り子だとすれば、それが元に戻る時の反動も過剰になることが心配です。
ところで、日本は原発を除くエネルギー自給率が4%、食糧自給率が39%に過ぎません。
エネルギーも食糧も大部分を輸入に頼り、その代金決済は米ドル建がほとんどです。わが国は近年、物価下落・デフレに苦しんでいますが、この物価安定は超円高に負う面が大きいともいえます。しかし、物価上昇率に関しては中国が6%程度、インド約10%、欧州3%と、世界はインフレ傾向であることを忘れてはなりません。
国連は、10月31日に世界人口が70億人を超えたと発表しました。1960年に30億人だった人類は2倍以上に増加すると同時に、新興国や途上国の生活水準の向上によりエネルギーや食料資源の需要が爆発的に増えています。世界自然保護基金によれば、人類全体が日本人の生活水準で暮らすと仮定すると「地球2.3個分の資源が必要」になるとのこと。
現在の超円高に関しては、輸出停滞の原因と嘆くばかりでなく、個人の資産管理の視点から欧米や新興国の優良企業株式や債券、外貨建資産への投資に活用する積極的思考も欠かせません。既に日本の国際的企業は、現下の超円高を海外優良企業のM&Aに活用し、中長期の国力低下に備えると共に世界の経済成長を取込む戦略を着々と進めています。
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