前回に引き続き、我が国の将来の命運が懸かる「新成長戦略」について紹介したい。
1.環境対策・EVやスマートコミュニティ推進の必要性
福島原発事故により世界中の原発建設が影響を受けている。日本国内では新たな原発建設はほぼ不可能になり、今年5月には国内54基全ての原発が停止する事態になった。2011年の貿易収支は31年ぶりの赤字に転落したが、第一の原因は原発を代替する火力発電の燃料・LNG(液化天然ガス)の輸入増加にあった。LNGは原油よりも低コストでCO2発生量も少ないが、原子力発電と比べて貿易赤字が定着し地球温暖化も進むのであれば、見過ごすことはできない。太陽光や風力発電など原発に代わる再生可能エネルギーの普及推進は、日本だけでなく世界における喫緊の課題である。
2.環境対策に係わるビジネス
地球温暖化防止に関する京都議定書に定められたCO2削減目標の達成が危ぶまれている。
言い訳をしても地球環境の持続可能性、生物多様性が保全されるわけではないので、環境に優しく効率的なエネルギー開発を促進しなければならない。環境ビジネスは、エネルギーの発送電から車や家電のエネルギー効率向上まで、人間の衣食住に係わる営み全てに関連する。低燃費の航空機・鉄道車両・車、クールビズやウォームビズ、省エネ住宅、節水型洗剤やトイレなど枚挙に暇がない。この分野で技術力のある日本企業が、低コストに磨きをかければ世界に大きく貢献できる。
3.EV(電気自動車)
ガソリンエンジン車の燃費が向上してもCO2発生は防げないが、EVは走行中にCO2を発生しない。量産化と政府補助金のお陰で価格もだいぶ下がってきた。次代を担う技術であるが、ガソリン車で世界をリードした日本車メーカーの競争力低下が懸念される。EVの部品点数がガソリン車の10分の1にも簡素化されるので、新規参入が比較的容易だからだ。戦後50年かけて築いた技術優位性も短期間に切り崩される危険性もはらんでいる。
4.スマートコミュニティ
再生可能エネルギーは環境に優しいが、天候や風力が日替わりで不安定なため、発電量も不安定になるという欠点がある。そこで不可欠なものが、スマートメーターと呼ばれる電力計である。電力需要をリアルタイムで把握して、再生可能エネルギーだけでは不安定な電力供給を火力発電などで補うことができる。都市計画の段階から地域のエネルギー効率を高めた社会をスマートコミュニティと呼ぶ。世界中で進むこのような計画に対して、オールジャパン体制で取組むことを期待したい。
以上