昨年9月に起きた米国の名門証券会社、リーマンブラザーズの破綻から世界的な金融経済危機になり、私たちの資産設計
も大きな影響を受けています。現在も危機は進行中ですが、激変する環境下の資産保全は次の点で注意が必要です。
『現在起きている現象』と『中長期の傾向』を区別して考える
金融市場も商品市場も経済全体がパニック状態を脱していない現在、私たちの目前で起きている現象にだけ注意を
奪われていては、重大なことを見落とす危険があります。今回の世界同時不況がいつ収束するか、誰も正確に予測
できません。しかし、その間の比較的短期的な現象と、経済環境が平常時に戻って以降の中長期の傾向を明確に
区別することが、資産運用や資産保全には大事なことです。例えば、・・・
1.デフレからインフレへ
2009年2月の国内自動車生産が前年比半減するような需要の蒸発が起きているために、原材料や資源価格が下落しました。
消費不振が続き消費者物価の下落、デフレ傾向が目につきます。
しかし、世界人口が年間7,500万人以上のペースで増加を続ける中で、天然資源や食料資源は有限です。
中長期的には、資源価格の高騰とインフレ経済を考慮しておかねばなりません。
2.円高傾向から円安圧力が強まる
世界同時不況の震源地米国のドル、金融危機の余波が大きいユーロ、カナダや豪州等の
資源国通貨が下落し、相対的に円高傾向になりました。
短期の為替レート予想は不可能ですが、中長期的に為替は各国の経済力や国力を反映します。
今後、人口が急減する日本が世界経済の中での存在感を弱める一方、米国や中国、インドなどが
人口増加し経済力を拡大すると、いつまでも円高傾向が続く筈はありません。
3.世界同時株安から成長力の国別格差に注目が集まる
リーマンショックから起きた世界同時株安ですが、心理状態が落着くに連れて各国の潜在成長力格差に関係者の関心が
戻って来ます。OECDの世界経済予測では、2009年の日本の実質成長率は▲6.6%、ユーロ圏▲4.1%、米国▲4.0%に
対して、中国とインドは減速しても+6.3%、+4.3%成長を維持します。市場関係者が将来に対する自信を回復すれば、
先進国と新興国の潜在成長力格差が正しく評価されることでしょう。
1929年の世界大恐慌時、米国の景気後退期間は43ヶ月でした。
今回の不況に突入する前の米国景気の山が2007年11月とすれば、すでに景気後退は17ヶ月目になります。
いつまでも不況と思い込んでいると、中長期の環境変化のサインを見逃す危険があります。
- ホーム
- 会社と社長のための資産管理講座
- 第15回 激変する環境下の資産保全を考える