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第70話 必然性のある商品開発を!

北村森の「今月のヒット商品」

地域マーケティング成功の3要素

 人の動きが再び活発になり、インバウンドの姿もまた目立つようになってきましたね。大都市圏だけでなく、地方の観光地にも賑わいが戻りつつあります。あらゆる地域産品に光が当たる好機となればいいな、と私などは思います。

 

 地域産品の開発については、全国各地で頑張る様子を見てきました。地方出張の折などには「どうやったらヒットを生み出せますか」と尋ねられることもしばしばです。地域マーケティングは、私の研究領域のど真ん中ですので、そうした質問をお受けする機会が多いわけです。

 

 私が答えることは3つです。

 

「足許にある宝物をきちんと生かすこと」

「必然性ある商品開発を心がけること」

「やってはやめて、ではなくて、長く続けること」

 

 今回は、この3つの要素すべてに当てはまると感じさせる事例をお伝えしましょう。

 

『道の駅よって西土佐』に学ぶ、地域マーケティングの成功法

 四国の高知県四万十市、清流として知られる四万十川に寄り添うようにしてたたずむのが「道の駅よって西土佐」です。もう少しクルマを走らせれば愛媛県との県境という里山(旧・西土佐村)にあります。

 

 細い道を進んだ先、かなり奥まった地に位置するのですが、それでも美しい景色を求めてでしょう、この道の駅を訪れる人は多く、平日の午前から買い物客が次々と訪れる姿が見られます。地元産の野菜もあれば、オリジナルの商品もいくつもあるという、かなり意欲的な取り組みを続ける道の駅であると、私は感じています。

 で、ここのオリジナル商品のなかでも、ひときわ私が評価しているのが「四万十川天然鮎のコンフィ」です。

 

 コンフィというのは、食材を油のなかに浸して低温調理したものをいいます。フランスに根づいている調理法ですね。この商品は、四万十川で獲れた鮎をコンフィにしたもの。でも、どうしてわざわざコンフィにするのか。そこには理由があったのだと聞きました。

 

 この道の駅には、地元の鮎漁師による鮎市場が併設されています。道の駅に鮎市場があるのは全国唯一とも聞きます。

 

 漁師さんたちには悩みがあったそうです。鮎の魚体が20センチを優に超えるような尺鮎(しゃくあゆ)が時折獲れて、それは美味しさのうえでもなかなかいいらしいのですが、売り先に困っていたというのですね。料理店などでは、魚体のサイズがそろったものを欲するので、ひとつふたつだけ大きな鮎があっても持て余してしまうからです。

 

 でも、味はいいんです。だから無駄にするにはあまりに惜しい。だったらどうするか。

 

 鮎の漁師さんと道の駅のスタッフは必死に考えました。そして結論が出た。「コンフィという方法があるじゃないか」と。

 

 油で低温調理すれば保存がききますから、焦って売り先を探さなくてもすみます。しかもこの調理手法をとれば、骨まで柔らかくなりますから、大きな尺鮎をまるごと楽しく食べられます。ある意味、いいことづくめなのですね。

 

 そして、「天然鮎のコンフィ」は誕生し、この道の駅の名物に育ちます。大きな鮎がその姿のままコンフィになっていて、その見た目もかなり魅力的です。これをお土産にして食卓に出せばとても映えますし、味もばつぐんです。冷やした白ワインやスパークリングワインにぴたり合うだけでなく、漬け込んであるオリーヴオイルはパスタに和えるとまた楽しい感じ。

 

商品化された後も、課題点の解消に努める

 ただし…。そんな「天然鮎のコンフィ」にも、商品としての泣きどころがないわけではありませんでした。

 

 まず、立派な尺鮎を使っているために値段が安くはないこと。2500円しますから、購入をちょっとためらうお客がいても仕方ないかもしれません。もうひとつは、このコンフィは要冷蔵なので、旅の途中で買うとなると遠くまで持ち帰るのに難儀するということ。

 

 そうした難点をどうクリアするか。道の駅のスタッフは考えに考えました。その結果、昨年新たにラインナップに加えたのが、缶詰バージョンでした。聞けば、発売にこぎつけるまで検討を重ねて2年ほどの時間をかけたそうです。

 

 缶詰であれば、常温で持ち運べますから、旅行カバンになかに突っ込めば、お土産としてもいいですよね。値段は1500円と、オリジナルバージョンより1000円安くなっています。缶詰の場合には、鮎はまるごとの姿ではなく、小さく切り付けた状態で収められているのですが、自分で切り分けなくてもいいと考えると、これも楽です(柔らかなコンフィを上手に切るのはちょっと難しい)。

 

 オリジナルバージョンと缶詰バージョンのコンフィを食べ比べてみましたが、缶詰のほうも十分に美味しい。開発に相当苦心したのではないかと想像させます。

 

 話をまとめましょう。「道の駅よって西土佐」は、その地にある鮎、それも売り先に困るけれども味は十二分で迫力のある姿の尺鮎をなんとかしたいと考えた(=足許にある宝物をきちんと生かす)。次に、そうした尺鮎の味わいを長い期間保持できる商品をものにしたいと奮闘してコンフィという手法を見いだした(=必然性ある商品開発を心がける)。そして、商品化された後も、課題点の解消に努め、ラインナップを増強した(=やってはやめて、ではなくて、長く続ける)。

 

 つまり、私の考える、地域産品開発に不可欠な3つの要素をどれも大事にしている事例なわけです。その意味で、この商品は見事だと思います。

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