menu

経営者のための最新情報

実務家・専門家
”声””文字”のコラムを毎週更新!

文字の大きさ

経済・株式・資産

第59回 リアルでは展開しにくい事業をネットで展開する典型「農業総合研究所」

深読み企業分析

農業総合研究所は農家が農産物を直接、全国のスーパーの店頭で販売するためのITプラットフォームを提供する企業です。
 
同社ではスーパーなどの小売業と契約し、スーパーの店頭に同社専用の直売所コーナーを設けています。生産者は農産物を生産、収穫し、自ら価格を決めて、売り先のスーパーを選び、同社の全国72か所の集荷場に出荷します。同社ではその集荷場から農家の申し込んだ数量をスーパーの物流センターへ配送します。
 
スーパーの店頭では直売所コーナーに並べられ、消費者が購入すれば、スーパーから販売データが同社に届きます。同社ではその販売データをメールにて農家に連絡します。農家はその売れ行きを見て、出荷量を検討し、販売価格を変更し、中期的には販売先のスーパーを変えたります。
 
2018年2月末時点の登録生産者数は、7,291名で、半年前に比較して461名増えています。それらの農家の生産する農産物は全国の1,081店舗で販売されています。これは、全国のスーパーマーケットの店舗数20,480店舗(新日本スーパーマーケット協会の「2018年スーパーマーケット白書」)の5.3%に相当します。
 
2017年8月期の流通総額は7,089億円で、2018年8月期の見込みは9,000億円となっています。
 
農家にとっては、大手小売業に自ら売り込みをかけることは簡単ではありませんが、同社を通すことで、売り場が確保できます。農家は自ら努力をして品質の高い農産物を作り、それが消費者に評価されるようになれば、ブランド化も可能で、高い価格設定も可能になります。つまり、品質向上努力が収入増に結び付く可能性が高まります。
 
一方、スーパーから見れば、リスクと手間をかけることなく、売り場の差別化が可能になります。もっとも、普及率が高まった場合には、差別化は難しくなり、逆にスーパーが人気の農家を探して、自社の店頭に並べるように働きかけることも考えられます。
 
このように旧来のルートではなしえなかった、個々の農家の努力が反映されるような新しい流通経路が、ネットの発展によって成し遂げられようとしています。
 
 
有賀の眼
 
アマゾンに代表されるネットビジネスは、しばしばリアルのビジネス市場を奪うものという捉え方があります。そう考えると、ネットビジネスはパイの奪い合いの手段となってしまいます。しかし、当然ですがリアルではしにくい事業をネットの特性を生かすことで、事業化するビジネスもまた無数にあります。
 
農業総合研究所の行う農産物の直売所はまさにその代表です。自らIT技術を極めるのは簡単ではありませんが、ITの専門家が提供するプラットフォームを利用することで、自らの価値を高めることができます。もっとも、すでに多くの人が利用しているアマゾンや楽天、食べログなどでは差別化自体が難しくなります。
 
その意味では、自らのビジネスに有効活用できるプラットフォームを見つけることが、今、最も重要かもしれません。あるいは、誰もやっていないようであれば、自らプラットフォーム・フォーマーになるのも一つの新しいビジネスの道かもしれません。

第58回 中小企業のネット利用の救世主「ソウルドアウト」前のページ

第60回 中古住宅再生で画期的なアイディア「カチタス」次のページ

関連セミナー・商品

  1. 社長のための「お金の授業」定期受講お申込みページ

    セミナー

    社長のための「お金の授業」定期受講お申込みページ

  2. 《予約受付中》有賀泰夫の「2025年からの株式市場の行方と有望企業」

    音声・映像

    《予約受付中》有賀泰夫の「2025年からの株式市場の行方と有望企業」

  3. 有賀泰夫の「2024年夏からの株式市場の行方と有望企業」

    音声・映像

    有賀泰夫の「2024年夏からの株式市場の行方と有望企業」

関連記事

  1. 第14回 職の創造に寄与し、強い競争力を保って高成長する「フォトクリエイト」

  2. 第9回 小売業ながら24期連続増収増益の偉業を達成「ヤオコー」

  3. 第55回 海外市場の拡大で第2成長期入り「アリアケジャパン」

最新の経営コラム

  1. 朝礼・会議での「社長の3分間スピーチ」ネタ帳(2024年11月20日号)

  2. 第七十八話 展示会後のフォローで差をつける「工場見学の仕組みづくり」

  3. 第219話 少人数私募債の相続対策

ランキング

  1. 1
  2. 2
  3. 3
  4. 4
  5. 5
  6. 6
  7. 7
  8. 8
  9. 9
  10. 10
  1. 1
  2. 2
  3. 3
  4. 4
  5. 5
  6. 6
  7. 7
  8. 8
  9. 9
  10. 10

新着情報メール

日本経営合理化協会では経営コラムや教材の最新情報をいち早くお届けするメールマガジンを発信しております。ご希望の方は下記よりご登録下さい。

emailメールマガジン登録する

新着情報

  1. 採用・法律

    第67回 個人情報を取得する前の準備
  2. 税務・会計

    第34回 社長の熱い思いが全社員に伝わる仕組みづくり
  3. 戦略・戦術

    第14話 「自社の株譲渡」
  4. 戦略・戦術

    第79話 「豊かになった成功企業を相続する時、なぜ、税金を株式相続人から取るので...
  5. 税務・会計

    第38号 親が相続を語る時(2)
keyboard_arrow_up