カチタスは石材業として創業した戸建て住宅中心のリフォーム販売業の「やすらぎ」が前身です。やすらぎは2004年に名証セントレックスに上場しましたが、2012年にアドバンテッジパートナーズが公開買い付けを行って、一旦未上場化されました。その後、現社長の新井氏を迎えてカチタスに社名変更し、2017年12月に再上場となりました。
我が国の住宅市場の一つの大きな問題として、中古流通市場の未整備を言われることがしばしばあります。同社は地方の一戸建てを中心に、中古住宅をリフォームして販売することがメインビジネスです。同市場では圧倒的なシェアを持っていますが、それでも年間の分譲住宅の販売戸数との比較で見れば、わずかに1-2%にすぎません。
これは先進国と比較して我が国では新築市場に対して中古住宅の流通市場が極めて小さいためです。既存と新築を合わせた全体の住宅流通市場に対する中古住宅のウエイトは、米国や英国では80%ほどを占めるのに対して、日本ではわずか15%程度となっています。これは我が国には木造の住宅が多く、耐久性が低いという事情もありますが、ハイクオリティな中古住宅を供給する業者が少ないという面もあります。その意味から言えば、同社がハイクオリティな中古住宅を提供することによる市場の成長余地は極めて大きいものと考えられます。
同社が主戦場とする地方における新築戸建て住宅の平均価格は3,000万円弱ですが、同社の中古リフォーム住宅の販売価格は1,400万円ほどとほぼ半分の価格になります。一方、地方において賃貸住宅に住んでいる人の平均家賃は5万円弱であるのに対して、同社が提供するローンは月額4万円弱となっています。
同社がターゲットとする所得層は、年収200-500万円の層で、我が国においては最も所得構成比の高い層ですので、やはり今後大きく伸びる余地があると言えるでしょう。
同社は2017年12月に再上場しましたがその前にニトリと資本業務提携を行っています。同社では1年ほど売れ残った中古住宅にニトリの家具一式を整備し、家具付き住宅として販売したところ、アクセス数が一気に3倍となり、内覧数も4倍となったことから、家具付き住宅に大きな可能性を見出しています。
現在までに24軒の家具付き住宅を販売したところ、想定以上の反響があるようです。前述のような売れ残り物件であれば、通常は値引き販売するのですが、むしろ家具代を上乗せしても売れやすくなるほどだということです。
これはニトリにとっても渡りに船です。ニトリは会社の方針としてコーディネートをメーンテーマにして家具売り場を展開しています。確かに、テーマが同じ家具が揃った部屋は非常に印象的です。しかし、一部屋分の家具を揃えれば、いくら低価格なニトリと言えども、数十万円とかなり高額になります。つまり、安い家具を求めてニトリに来店した顧客には、コーディネートを行うハードルはかなり高いものです。それゆえ、せっかくのコーディネートも宝の持ち腐れになっているのが現状でした。
通常、新築・中古を問わず住宅を購入すれば、その後家具を揃えなければなりません。しかし、すでに家具一式が揃っていて、しかも部屋ごとに統一テーマでコーディネートされた中古住宅が1,500万円ほどで買えるとなれば、これほど便利なことはないでしょう。しかも、家具付き住宅であれば、家具代も住宅ローンに組み入れることができます。その意味では、ニトリと組んだ家具付き住宅は今後同社の中古住宅の主流になって行くのではないでしょうか。
有賀の眼
実はこの家具付き住宅は、カチタスにとって大きな意味を持つことは間違いないと思われますが、ニトリにとってもかなり面白い展開が期待されます。つまり、家具付き住宅は何も中古に限らないからです。
カチタスの取り組みがうまく行って、住宅購入において家具付きが一般的になる可能性も秘めています。高級住宅を買う人は別として、第一次取得者として家を買う人にとっては、住宅購入後の家具購入の負担はかなりのものです。仮にそれまでの住宅で使っていた家具を使うと、やはり家の新しさとの違和感が目立ってしまいます。
その点、新品の家具で、しかもコーディネートされていたら、なんと便利なことでしょうか。つまり、中価格帯までの新築住宅でもやがて家具付きがスタンダードになる可能性を秘めているということです。これまででも当然家具付き住宅の発想はあったと思われます。しかし、それが定着しなかった大きな理由は、家具を一通り揃えるとかなりの金額になってしまうためです。
しかし、ニトリならば低価格ですべての家具をそろえ、しかもコーディネートされているわけですので、それがスタンダードになる可能性はかなり高まる可能性があります。