※本コラムは2024年7月の繁栄への着眼点を掲載したものです。
故一倉 定先生は、「戦術がいかに優れていようと戦略が間違っていれば戦いには勝てない」と言った。
戦略とは、儲かる方向性を決定すること。儲かる方向性を決めたら、今年一年どうやって戦うかを決めるのが戦術である。
儲かる方向性とは、大きなところから小さいところに落とし込んでいくのが鉄則である。我が社を取り巻く「経営環境」がどう変化をしているか。ウクライナ問題も、イスラエル問題も、為替も、物価高騰も、何も影響のない会社などないはずだ。そこから自社の「経営体質」に落とし込む。経営体質とは、自社が、受注体質なのか、見込み体質なのかしっかりと掴むこと。受注も見込みもその体質は真逆である。よって打つ手も変わってくる。
先日、岐阜県下呂市にある水明館の事業発展計画発表会にて基調講演をしてきた。いまの社長の瀧さんは三代目で無門塾の卒業生である。瀧さんは時代の流れを的確に掴んでいる。90年代からバスによる団体客が減り始めると、早くから個人客の獲得に乗り出した。インバウンドもあったが、彼らはリピートがまずない。日本人の個人客が我が社のメインのお客様なのだと決め、インバウンドは平日に日本人の個人客は週末にと決めた。
旅行会社によるバスの団体客は「受注」個人客は「見込み」である。何処をメインにするかで実は戦術はまるで変わってくるのだ。ここが分かっていない人が多い。
2020年から新型コロナウイルスの影響でインバウンドが一時消滅した。しかし、日本人の個人客をメインにしていたので、売り上げの減少を最低限にとどめることができた。5類への移行によりインバウンドは復活したが、そこは変わらない。現在では日本人の個人客も、車ではなく電車で来る人が徐々に増えてきているという。そうすると戦術はまた変わってくる。こういった変化を正確に捉えられるかどうかで結果は変わってくる。
最後に重要なのが、「社長の手腕」だ。これが「成長拡大」と「安定」の考え方だ。
増客、粗利益・価格、組織・体勢づくりの3つが成長拡大であり、繰り返し買っていただく仕組みづくり、商品を磨く、お客様第一主義の3つが安定だ。この6つの順番が牟田式だ。
日本経営合理化協会に入協してまだ間もない頃、牟田 學の地球の会第2期に同席をして学んだ。その時、個別面談を見ていて烈火のごとく怒る牟田 學を初めて見た。「こんなに怒るんだ」と息子ながらに思った。怒られた人の大半は、事業発展計画書の戦略の部分をお客様第一主義から書き始めていた。「成長拡大」と「安定」とは順番が重要なのだ。
皆さんは、「お客様の定義」を持っているだろうか。お金を出せば、どんな人でも全てお客様だろうか。お客様は本当に神様なのだろうか。これは答えなどなく、社長が自分で考えなくてはいけない。
私の考え方は、「お客様は神様である。しかし、媚びへつらってまで買っていただこうとは思わない」と明確に決めている。社員に誇りをもって働いていただきたいからだ。カスタマーハラスメントが問題になりつつあるいま、線引きは必要なのではないか。そのためにも増客は絶えず絶えず必要なのだ。お客様も重要である。が、一会社として利益を出していなければいくら綺麗ごとを言っても話にならない。利益が前提なのだ。それが事業発展計画書そのものなのだ。
※本コラムは2024年7月の繁栄への着眼点を掲載したものです。