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戦略・戦術

第108話 「個人保証を外す銀行交渉をしなさい!」

強い会社を築く ビジネス・クリニック

アイシーオーコンサルティングの古山喜章です。前回に続き今回も、私が原稿を書かせていただきます。
 
“個人保証は外してもらいないさい!”“外せますよ。”と、繰り返し、申し上げています。政府系の銀行では、保証人免除のチラシを、店頭に備えてもいます。
なのに、“銀行に交渉したら、こんなことを言われました!”と、簡単には進まない場合が多いです。
しかし、なかには、“えっ?それってどういうこと?”と言いたくなる、意味不明の困った迷言も多々あるのです。その事例をふたつ、紹介しましょう。
 
まず、ひとつめです。
(1)「ガバナンス機能が必要ですね…。」
 
これはもう、だまされた、としか言いようがありません。
“個人保証を外すには、社内のガバナンス機能が必要ですね…。”
銀行の担当者が言ったそうです。経営者は、「一体どういうことだ?」と思ったものの、“そうなんですか”で、その場は終わってしまった、というのです。
銀行担当者にしたら、してやったりです。
“「ガバナンス機能って、どういうことですか?」と、突っ込まなかったんですか?”と、経営者に聞くと、“いやぁ、ちょっと聞きづらくて…。”とのことです。要は、若い銀行担当者に、わからない言葉を尋ねるのが、いやだったのです。
 
相手は、経営者のプライドの高さを知ってか知らずか、実は無関係だけど、意味ありげな言葉で、返してきたのです。ガバナンス(=企業統治)機能があるかないかなど、個人保証になんの関係もありません。
そもそも中小企業に、たいしたガバナンス機能など、あるはずもありません。
というより、最もガバナンス機能が問われているのは、銀行自身のはずなのです。それをよくも、その担当者は言い放ったものだな、とあきれてしまうのです。
 
銀行担当者にすれば、個人保証を外させられた、というのは、嬉しいことではありません。不名誉です。個人の成績には、マイナスです。だから、そうならないように、適当なありもしないことを、平気で言ってきます。無関係な理由にひるまず質問し、交渉を続けなければならないのです。
 
ふたつめの事例を紹介します。
(2)「倫理的に責任の所在をはっきりさせるためです」
 
これも、なんだか煙幕を放たれたような、意味不明のモヤモヤ言葉です。もはや、わけがわかりません。
あらためて、金融庁のガイドラインを見ました。個人保証に対する金融機関の考え方を変えることになった、金融庁のガイドラインでは、次のような見解です。
個人保証は、
 1)経営に対する経営者の規律付け
 2)資金調達の円滑化

ということに寄与する一方、
 3)思い切った事業展開の阻害要因
 4)経営が窮境に陥った場合の再生阻害要因

になっているのが、課題としています。
だから、個人保証をむやみにつけるな、個人保証ははずしなさい、と、金融機関の考え方を変えさせたわけです。3)と4)が、重要なポイントなのです。
 
「倫理的に責任の所在をはっきりさせる」という意味不明の言葉は、上記4項目のうち、おそらくは1)のことを指すのでしょう。が、3)と4)については、全く応えていない、ということになります。
つまり、金融庁が推進しようとしていることを無視している、ということになります。昔のまんま、スタンスはな~んにも変わっていない、わけです。
 
結局、銀行担当者は、個人保証を外したくないのです。銀行員の評価は、点数制です。個人保証を外すことは、点数のマイナスに影響します。だから、ああだこうだと、言ってくるのです。
銀行担当者の、意味不明な迷言に流されず、さらなる交渉を続けてほしいのです。
 
最後にもう一度、銀行が個人保証を免除できない場合の、2つの条件をお伝えします。
 (1)2年続けて、減価償却前の経常利益が、赤字である。
 (2)債務超過である。

この条件に該当しないなら、個人保証を外すことは、できるのですよ。
実際、私の指導先で個人保証を外した経営者がたくさんいらっしゃいます。

 

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