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- 第64回 AIで白黒写真を手軽にカラー化
囲碁や将棋のコンピューター対戦、病気の診断、車の自動運転、家電のコントロールなど、近年は何かとAI(人工知能)が話題です。これは第3次AIと呼ばれるもので、一昔前に流行ったAIとは全くの別物。人間を超える場面も出てきました。
その秘密がビッグデータとディープラーニング。インターネットに代表される通信ネットワークの発達で、低コストでビッグデータ(大量のデータ)が収集可能になりました。そのデータを、脳の神経回路をヒントにした「ニューラルネットワーク」を用い、コンピューターが自ら学習することで、人間のような認識能力を身に付けます。
コンピューターは疲れを知らず、大量のデータを分析することができるので、人間には想像の付かない法則、言い換えると、人間を超える知見を見いだす可能性を持ち、様々な分野での応用が期待されています。
■AIで白黒写真をカラー化!
AIの応用範囲は無限と言えますが、画像認識は得意分野の1つです。その能力を白黒画像のカラー化に用い、昨年話題になったのが、早稲田大学理工学術院の研究グループが発表した「ディープネットワークを用いた白黒写真の自動色付け」です。
既にWEBで誰もが利用できるように公開されていて、手軽に試すことができます。
「ディープネットワークを用いた白黒写真の自動色付け」 http://hi.cs.waseda.ac.jp:8082/
一旦理屈は横に置いておいて、先ずは試してみました。
上段の集合写真は、約40年前、筆者が小学1年生の時に学校で記念撮影したものです。木々の葉が緑色に、顔が薄橙色に、校舎の壁面や地面が土色にと、概ね自然な印象でカラー化されました。一方、下段の顔がアップの写真は、全体がセピア色になって、何となく色が付いたような雰囲気はありますが、プランターの植物に全く色が感じられません。
両者の違いは、典型的な写真と、特殊な写真の違いと思われますが、今後、学習量が増えれば、精度は増すでしょう。
なお、こうしたAIを用いる手法では、結果に対する詳細な根拠を知ることができません。あるヒトが、猫を見て「ネコ」と判定した理由を、他人に伝えるのが難しいのと似ています。
白黒写真のカラー化においては、屋外や屋内、昼と夜など、画像全体に影響する要素(大域特徴)と、木々の葉、砂、水など、物質の違いといった部分的な要素(局所特徴)が手掛かりになるようです。映っているものが判定できれば、木々の緑、地面、顔などは、ある程度色づけが出来そうです。
因みに、今回ご紹介した研究「ディープネットワークを用いた白黒写真の自動色付け」は、大域特徴と局所特徴を結び付け、学習の速度と精度を向上させたのがポイントとのことです。
現在は、上記の変換例のように、人間の認識能力は想像力には追いついていませんが、今後、学習が進めば、人間を超える可能性も充分にあります。例えば、先述の集合写真では、男性教諭のスーツが何色かは、人間でも想像が付き難いでしょう。AIも、無難な薄茶を選んだのでしょう。AIならば、今後、我々の想像を絶するような特徴を見つけて、正確な色を取り戻す時代がやってくるかもしれません。
■さいごに
百聞は一見如かず。まずは皆さんも、手持ちの白黒写真で試してみては如何でしょうか?当時の記憶が蘇るかもしれません。
この技術は、白黒映画のカラー化にも応用が期待されています。現在は人手によってカラー化を行うことが可能ですが、コストやスピードがネックで、人工知能を利用すると大きく進展しそうです。昔見た白黒映画をカラーで見直すのは、また一味違った楽しみになるかもしれません。