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- 第33話 「黒字目標→赤字目標」
後継社長塾のOB塾生に千葉県のS君がいらっしゃる。彼は4年前に父の後を引き継いで、千葉県銘産品のメーカーの社長として活動しておられる。先日、セミ ナーにお呼びして体験談を語って頂いた。
彼は、先代社長の不良資産(土地、有価証券など)を5年間、ただひたすら私の教えどおりに毎期、特別損失として膿を出しながら処分し、カタ太 りの経営体質にもっていかれた。先代社長に多額の退職金を支払い、法人税を一円も支払うことなく100%自社株を相続されたのであります。
勿論、その間にキャッシュフローを改善し、3店舗の新規出店をされ、売上も2倍にしておられる。その時の彼の口から、皆が聞きなれない単語が たびたび発せられたのでした。
その単語は「赤字目標」なる言葉でした。
聴講生が
「先生、黒字目標という言葉は知っていましたが、赤字目標を掲げて経営する社長もいるのですね・・・」とビックリしていました。
S君の社長としての仕事のなかには、先代が失敗した売れない土地、下がった有価証券、ゴルフの会員権、貸付金等の不良債権、不良在庫と多くの 不良資産などで粉飾したバランスシートを期毎に、いかにして正常に戻すのかが課題であったのです。
皆さんの会社においても資産の中味をよく確認してみてください。
2008年、秋に始まったこの不況で再びデフレモード、在庫棚卸商品、不良売掛金、値下がりした有価証券、土地、建物はありませんか・・・電 話債権などと言う前世紀の遺物は残っていませんか・・・
本年2009年、来年の2010年は「節税の年」です。特に今期税前利益が赤字であれば前年黒字で支払っている 法人税の還付があるのです。
自社株の相続税評価額も非常に値下がりし、後継者が相続するのに一大チャンスが巡ってきております。
一般的に株価算定式は、類似業種、すなわち上場会社の株価が基準になっており、かなり低い平均株価です。算式の中には、一株当り税前利益がか なりウエイトを占めていますので、ぜひとも税引前利益を赤字にすべきです。
値下がりした不動産も子会社に売却してしまいましょう・・・5年後に売却すれば(?)その利益から1000万円は特別控除があるのです よ。
幹部社員は営業利益をいかに黒字にするかは当然の仕事です。一方、経営者は資産の中味を洗いなおして、不良のものを出し、簿外負債でもある退 職金なども出して、ぜひとも税前利益を赤字にする努力をして欲しいのです。今期はあのトヨタや楽天も税前利益は赤字です。
「赤信号、みんなで渡れば怖くない・」
2~3年後、皆が黒字になった時、
「赤信号 一人で渡れば怖く、命を落とす・・」ですよ。