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- 第179回 『社長の「器」の大きさが、会社の存続を左右する』
「企業は、社長の器以上に大きくなることはない。
社長に器がないと、会社の中にはトラブルが絶えない。
これを器もめ(内輪もめ)という」
・・・ちょっと寒いおやじギャグだが、言いたいことはマジメである。
器というと、中国の明の時代に、呂新吾という人が、
『呻吟語(しんぎんご)』という書で述べている、人物鑑定に関する説がある。
まず第一級の人物として挙げられている条件は「深沈厚重」。
人物が大きく、深い信念を持ち、時勢を先まで見通している。
禍を未然に防ぎ、知らず知らずの間に人に計り知れない幸福を与えながら、
一向にそれらしい素振りを見せないという感じの人である。
何があっても動じない大器といえる。
ズバリ一人だけ名前を挙げるとすれば、西郷隆盛 ということになる。
二番目は、「豪雄磊落」である。
これは豪傑といわれる類の人のことだ。
瑣事にはこだわらず、肩をそびやかして自信に満ちた態度で大道を闊歩する。
見るからに安心感を与える。
器は大きいが、深沈厚重にははるかに及ばない。
中には豪雄磊落うぃ気取っている小者もいるので注意を要する。
大物ぶっている一部の政治家は、さしずめこの型か。
三番目は、「聡明才弁」である。
頭が良くて弁の立つ人のことであるが、
人物度の格からいうと三番目になってやっと挙げられている。
いわゆる一流大学を出たキャリア官僚やエリートサラリーマンには
この手の人が多い。
才が特に光っている人のことを、才子とか小人という。
対するに、才よりも徳の方が勝っている人は君子、大人という。
深沈厚重は君子、大人であり、
聡明才弁は才子、小人ということになる。
理想的な企業とは、
深沈厚重のトップが聡明才弁の少数にスタッフを率いている、
そして現場には、ソレイケドンドンの豪雄型がいる、という姿ではないか。
人の品定めついでに、「人気に人」と「人望の人」という分け方を挙げてみたい。
人気と人望は、どう違うのか。
辞書には、人気とは「世間一般の気受け」というう言葉で出てくる。
世間一般の人がその人に対して抱く好き嫌いの感情のことで、
広く世間に知れ渡って有名であるかどうかということである。
タレント、スポーツ選手などを思い浮かべると、正に人気だと思う。
企業になかにも人気者はいる。
一方、人望とは、ある人に対して多くの人が
「信頼」と「尊敬」の気持ちを寄せているということで、
人気とは本質的に異なるものである。
人望のある人は人格面が中心となる。
自分の心を世間や外に向けるのではなくて、
自分の中にあって自分を律していく人である。
企業の世界でも、人気というだけでトップの座に就いた時には危険信号が点る。
よほど補佐役がしっかりしていないともたない。
人望は実態と品格が基盤にあるが、人気は飾りだけでもっている。
経営者には人気は不要である。人望が必須である。