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税務・会計

第39回「社長を支える経理」に成長させる方法

賢い社長の「経理財務の見どころ・勘どころ・ツッコミどころ」

 私はこれまで、大企業から中小企業まで10,000人以上の経理社員と接してきました。
 そこで感じていることがあります。特に中小企業においては、経理人材が育っていないということです。
 人材の育成に関しては、人によって個人差はあります。しかし、職場環境が大きく影響しているのも事実です。
 人材が育成されない会社の経理担当者の仕事を見てみると、共通点があります。

 そこで今回は、「経理人材が育たない3つの理由」について説明します。経理が進化しない会社は成長できません。御社の経理を検証して、成長を促してください。

御社の経理社員は、毎年成長していますか?

 


《経理人材が育たない理由①》何年も同じ仕事しかしていない

 経理業務は日次、週次、月次、年次と、周期的にやるべき仕事が決まっています。
 経費精算や支払業務、請求回収、会計処理等、それぞれの作業は、慣れている担当者が長期にわたって繰り返し処理するのが一般的です。
 特に少人数の中小企業においては、1人の担当者が何年も同じ仕事をしていることがよくあります。
 単純な経理事務作業を長期間続けていても、経理人材としてのスキルが身につくことはありません。
 ほぼすべての経理事務は、コンピュータで処理されているからです。経理事務を2年以上続けたとしても、計算力も思考力も養われません。多少パソコン操作が速くなる程度で、経理財務の専門的なスキルは身につかないのです。
 そのため、経理の仕事を3年間経験しても、業績管理や資金繰りのやり方を理解していないという人がほとんどです。
 社長としては、「経理に5年もいれば、予算編成や財務計画を任せられるようになるだろう」と思うでしょう。しかし、実際にできる人はごくわずかしかいない理由は、ここにあります。
 会社として、経理社員に定期的に新しい役割を与えて、少しずつレベルの高い仕事を担当させなければ、経理人材は育たないのです。

御社では、経理社員に2年以上同じ事務作業をさせていませんか?

 


《経理人材が育たない理由②》比較されるライバルがいないので危機感がない

 経理部門は専門的な仕事なので、人事異動があまりありません。少人数であるため、欠員が生じるまで新しい人が入ってこないということも珍しくありません。
 また、担当業務が専任制になっていて、他の社員と交替で仕事をすることがありません。特に中小企業等では、1つの業務に対して担当者が1人だけという体制がほとんどです。
 このような経理の職場環境においては、仕事上のライバルは存在しません。
 人間は競争相手がいないと努力をしなくなります。
 仕事に限らず、勉強やスポーツ、趣味などあらゆることにおいて、ライバルの存在が刺激になり、自らをもっと向上させようとするものです。
 仕事のレベルを比較する対象者が身近にいない経理では、対抗心を抱いて自らの能力を日々向上させようという意欲はわいてこないでしょう。
 したがって、経理社員を成長させるためには、他者と比較して自分のレベルを認識させる必要があります。
 そのために、外部を利用するのもひとつの手です。
 例えば、派遣社員を採用して経理事務の一部を担当させたり、特定の業務をアウトソーシング業者に委託してみたりするようにします。
 会社の外に強力なライバルがいることがわかると、このままでは自分の仕事がなくなるという危機感を感じるようになります。

御社の経理社員に、能力を比較するライバルはいますか?

 


《経理人材が育たない理由③》経理のIT化を理解していない

 与えられた事務作業を毎日繰り返すだけの日常は、仕事のやりがいが感じられません。しかし、それを求めなければこんなにラクなことはありません。能力を比較されるライバルもいなければ、成長はしなくても、苦労して努力する必要もありません。
 ラクな仕事に慣れてしまうと、その状態から抜けられなくなります。さらに悪いことに、ルーティンワークが習慣になると、変化を嫌うようになります。社会が変化しても、他人事として受け入れなくなってしまうのです。
 怖いのは、現在のように変化のスピードが早い時代です。
 経済取引がデジタル化し、事務処理のIT化が急速に進んでいきます。すでに、大企業を中心に事務処理の多くがコンピュータにより自動化されています。ラクな経理事務の仕事は、近い将来確実になくなっていきます。経理社員にとって、本当のライバルはコンピュータなのです。
 世の中から経理事務の仕事がなくなりつつあるなかで、ラクをして経理事務にしがみついている人は、気がついたときには失業していることになるでしょう。
 デジタル化の流れを当分先の話だと考えている経理社員は少なくありません。
 社長は、社内のデジタル化対応を進める過程で、経理社員に将来の仕事のイメージを伝えておいてください。

御社では、経理事務をいつまで社員にやらせるつもりですか?

 


“帳簿屋”を卒業させて「社長を支える経理社員」へとシフトさせる

 今回は、「経理人材が育たない3つの理由」について説明しました。

《経理人材が育たない3つの理由》
①何年も同じ仕事しかしていない
②比較されるライバルがいないので危機感がない
③経理のIT化を理解していない

 御社の経理社員が、いずれか1つにでも当てはまっていたら、危険信号です。経理社員に危機感を持ってもらうことが必要です。

 デジタル化が、経理の仕事を変えつつあります。環境の変化に適応できない経理社員は、間違いなく淘汰されます。事務処理はコンピュータの仕事、その結果を判断するのが経理社員の仕事に変わっていきます。
 いま、経理部門で求められている人材は、事務作業員ではなく、数字を見て判断できる財務管理者です。
 社長としては、経理社員がリストラ対象にならないように、できるだけ早い段階で経理事務から卒業させ、財務管理の仕事ができるようにスキルアップを図ってあげてください。

御社の経理社員は、3年後に生き残れますか?

 

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