継続するコロナ禍のなか、この2021年にぜひとも改めてほしいことを、書かせていただきます。
次の3点に共通するテーマは、
「いかにして労務コストを下げるか」ということです。
1)社内における完全キャッシュレス化
店舗の釣銭は別にして、それ以外の現金の取り扱いを改め、完全キャッシュレス化にチャレンジしてほしいのです。
現金があるだけで、コストロスが発生します。まず、現金出納が必要になります。
現金管理を担う従業員が、この実務をこなしているのです。現金残高が合わなかったらどうしよう、という、精神的ストレスを、いつも抱えています。
経営者には見えにくい部分ですが、リターンのないコストであり、見えざる精神的負荷を与える業務なのです。
第二に、現金は、人を罪の世界に誘惑します。不正の温床になりやすいです。
だから、任せっぱなしにせず、他の誰かがチェックをする、という作業も必要になります。実際に横領が発生した会社を何社も見てきました。
当然、その従業員は退職となります。その人が悪い、という面もありますが、そもそも現金を扱っていなければ、その人は罪を犯さなかったのです。
第三に、感染リスクの低減です。現金は不特定多数の方が触り、流通しています。
お金を触ったときは、手を洗うまで絶対に顔の一部など、自分の体には一切触れない、というのなら構いません。
が、それは実際問題できないと思われます。それに、現金管理をする者が感染すると、結構、面倒です。その変わりは数名いる、という会社は少ないはずです。
時代の流れは「キャッシュレス」です。
その流れに、乗り遅れることのないようにしてほしいのです。何より、現金管理はリターンのないコストです。そのようなコストを抱える余裕は、もはやないはずなのです。
2)会議資料のペーパーレス化
会議の資料そのものは、エクセルやワード、パワーポイントなど、デジタルで作成しているはずです。
ならば、その資料を各自がノートパソコンやタブレットで見るようにすれば、紙で印刷する、という煩わしい作業は無くなります。
「いやぁ、そうはいってもうちの社長(会長)は厳しいです。」
という声もあろうかと思います。その1部は紙で印刷するにしても、他の者は、デジタル対応で可能なはずです。
1人の紙対応のために、全員がそれに合わせる必要はありません。
私たちが参加している経営会議でも、デジタル対応が増えてきました。
ある会社では、会議室が密にならないよう、参加者が会議室と事務所内に分散し、リモートを活用した形で会議を行っています。
会議の資料を紙で準備していると、追加の資料があったり、修正があったり、部数が変わったり、まあ何かと手間がかかるのです。
なかには、提出期限を守らない経営幹部もいて、担当者が何度もやんわりと催促することになります。資料準備をした者にしかわからない、手間と苦労があるのです。しかし、この手間や苦労も、何のリターンもありません。単なるコストなのです。
今や、そんな手間をかける必要のない環境は整っています。クラウドやリモート対応も取り入れておられるはずです。新たなデジタル環境を存分に活用するかしないかで、かかるコストが変わってくるのです。
まずは自社の会議の在り方を見直し、ペーパーレス化を進めてほしいのです。
3)営業マンを減らす
「うちは営業マンが弱いから売上が伸びない!」
そう思い込んでいる中小企業の経営者が、今も多くおられます。
しかし、よく考えてみてください。巷で行列ができている店や、入荷まで〇〇ケ月待ち、などと言われる店舗や会社は、営業マンの営業力で売れているのではありません。商品力で売れているのです。
優秀な営業マンを採用して人数を増やす!商品知識の教育をする!セールストークのセミナーに行かせる!などと取り組んだところで、商品力さえ強ければ、そんなことは無関係に売れるのです。
むしろ、営業マンを減らす、最終的にはゼロにする、ということを描きながら、
「うちの会社に営業マンは本当に必要だろうか?」
というところに立ち戻って考えてほしいのです。
何かにつけて営業マンが本社に電話で問い合わせて確認したり、
ファックスを多用したり、していないでしょうか。
そのようなアナログな営業スタイルでは、営業マンの労務コストは減らないのです。
「うちの営業受発注の主力はファックスです。」という時点で、アウトなのです。
顧客の質問や要望に、自動応対できるツールやシステムは、すでに存在しているのです。それらが社内にそろっているかどうかです。
営業マンの採用、給与、教育、旅費、その他経費、は大きなコストです。
そのコストを減らし、システム構築と管理にコストを費やす会社が、業績を伸ばす時代に突入しているのです。
「うちはホームページが24時間働く営業マンです。」
という会社がありました。ホームページを充実させる。顧客への情報発信を充実させる。検索されやすいように仕掛けをする。など、ホームページだけでも、できる営業活動はまだまだあるはずです。
自社の営業活動のスタイルを、今一度、見直してほしいのです。
以上、ここで挙げた3点は、労務コストを減らす一例にすぎません。
コロナ禍を受けて、世の中は確実に、デジタル型経済に変わってゆきます。
変化に対応できない会社は、労務コストの負担がますます膨らみ、損益分岐点売上高が下がらず、ライバルとの競争について行けなくなります。
最大の固定費である労務費を下げるため、これまでの常識に捉われず、大胆な業務改革に取り組んでいただきたいのです。