コロナ禍で、資本金を減らす会社が、続々と出ています。
特にコロナの影響をもろに受けている外食産業、旅行業界で、
資本金を減らす会社が続出しています。
(例えば、JTBは資本金23億円を1億円にしています)
新聞に出てくる会社は、上場会社が多く、
そのほとんどは、資本金を1億円にしています。
ご存じのとおり、資本金1億円以下となると、
税務上は、中小企業となり、優遇税制がたくさん受けられます。
減額分は剰余金に組み替えるため、自己資本は減りません。
資本金1億円以下のメリットとしては、
①即時償却、特別償却が使える
②30万円未満の資産を買った場合は、損金に落ちる
③多額の損失が発生した場合、最大10年間は税金を払わなくて済む
④多額の損失が発生した場合、前年に支払った法人税を取り戻せる
⑤交際費が800万円まで損金になる
⑥法人税率が優遇されている
⑦住民税が安い(数万円~10万円程度安く済む)
⑧赤字でも税金がかかる外形標準課税が発生しない
⑨税務調査は、税務署が対応する(資本金1億円超は、国税局対応)
資本金1億円以下は、中小企業とみられるわけですが、
これは、あくまでも税務上の話です。
中小企業庁は、また別に、中小企業の要件を定めています
例えば、経営セーフティー共済は、業種によっては、
資本金1億円以下でも、この共済に加入できない会社もあります。
(小売業、サービス業、旅館業など)
資本金5,000万円以下であれば、どんな業種でもセーフティー共済に加入できます。
セーフティー共済加入のほかに、現在、目玉となっている、
事業再構築補助金などの助成金についても、この基準が適用されます。
業種によっては、資本金が1億円だと、こうした支援が受けられない会社もある、ということです。資本金5,000万円以下にしておけば、例外なくこうした支援の対象となります。
新聞を見ていると、「中小企業が優遇を受けていてけしからん」という論調もあります。特に、税務メリットを受けるために、大企業もこぞって資本金を減らしており、中小企業に該当するかどうかのバロメーターとして、
資本金1億円は相応しいのか?これまでも議論されています。
この意味で、将来的には、税務上の大企業の基準が、
資本金1億円から引き下げられる可能性は十分あると思っています。
ですから、私は、資本金1,000万円でも良いと考えるのです。
資本金を1,000万円にすると、法人住民税も10万円ほど安くなります。
(これは従業員数によっても変わります)
よく、会社のホームページを見ると、
「資本金 ○億円」と書かれいる会社があります。
資本金の大きさが会社の信用を表す、人材採用で有利になる、
という感覚は、今もなお存在しています。
しかし、財務がよくわかっている人からすれば、資本金額の大きさを競うことは、意味がありません。大切なのは、自己資本です。
資本金を減らしても、自己資本の金額が減ることはありません。減資をしても、株価も、銀行評価も、何も変わりません。
それでも気になる会社は、「資本金」という表示を、「資本金等」という表示に変えて、これまでどおりの資本金額を表示させてください。
あるいは、グループ会社が複数ある場合は、「グループ資本金」として、
できるだけ多く表示させている会社もあります。見せ方は、さまざまです。
いずれにせよ、資本金というモノサシは、遺物となりつつあるのです。
御社の資本金は、いくらでしょうか?