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採用・法律

第8回 『信託による事業承継の仕組みとは?!』

中小企業の新たな法律リスク

 創業社長も70歳半ば。そろそろ真剣に事業承継について考えなくてはなりません。

* * *

 

太田社長:税理士からも、銀行からも、最近とみに事業承継の準備について聞かれるのですが、息子は今一つ頼りないし自分もまだまだ引退するつもりはありません。ただ、本は少し読んでみたのだけど…。

賛多弁護士:何かヒントはありましたか。

太田社長:んん。ただ、「信託」というのが扱いは小さいですが、たいがいの本にはありますね。他の節税策は税理士も教えてくれるのですが、この「信託」というのがわかりません。

賛多弁護士:まあ、弁護士でも知っている弁護士は少ないですからね。ただ、有力なツールでもあるので、書かないわけにもいかないといったところでしょう。

太田社長:それでこの「信託」というのは何なのでしょうか?税金的に得なことがあるのですか?

賛多弁護士:まあ、なかなか一言で説明するのは難しいのですが……。主には、相続や高齢者の財産保護の場面で活用されている例が多いですね。ただ、事業承継でも有力な手段であることに間違いはありませんし、現実に利用されてもいます。

太田社長:それで簡単にいうとどういう仕組みなのですか?

賛多弁護士:事業承継に利用される場合についてだけ一般的な仕組みを申し上げると、まず社長の持っている御社の株式を、このためだけに作った一般社団法人に信託します。そして信託財産により生まれる利益、主には株式配当ということになりますが、これを受ける権利者を後継候補の息子さんとします。

太田社長:それで?

賛多弁護士:こうすると株式の持つ経済的利益は息子さに移ることにより、株式は社長から息子さに贈与されたことになります。事前に自社の株価引下げ策をやっていれば、贈与税の負担を軽くして自社株を息子さに贈与することができます。

太田社長:しかし、さっきも言ったとおり、息子はまだ頼りないし、私もまだ引退するつもりもないのだけど……。そもそも普通の贈与をしたって効果は同じではないのですか?

賛多弁護士:それが違うのです。信託の場合、議決権の行使は一般社団法人が持つことになります。なので、一般社団法人の構成員に社長も入るなど工夫をすれば、社長が自ら議決権行使をするのと実質的に同じになります。あるいは議決権行使の指図権を社長個人が保有する契約にすれば、文字通り、社長が議決権を行使する、すなわち社長が経営権を握り続けることになります。他方、さっき申し上げたとおり、株式自体は息子さに贈与されたことになります。株式を後継者に承継して、経営権を握り続ける方策としては「黄金株」を社長が1株だけ保有することも行われていますが、信託は社長と一般社団法人との契約だけでできるので、株主総会の開催や定款の変更といった手間が不要な分だけ、黄金株を発行するより手続が簡易と言えます。

太田社長:それで税金は安くなれば言うことないですね。

賛多弁護士:残念ながらそれはありません。事業承継の有力かつ柔軟なツールですが、税務面での効果はありません。

* * *

事業承継においては、税務面ばかり強調される感がありますが、経営をいつバトンタッチするのかはもっと大切でしょう。信託によって経営と所有が一時的に分離されて、株式を後継者に承継する一方、現社長は経営権を保持することが可能になります。経営のバトンタッチについて選択期間を手に入れたことになります。ただその間なんの工夫もなく、いたずらに自己の引退を伸ばしているだけだと、後継者や会社に悪影響を及ぼすことも考えなくてはなりません。

執筆:鳥飼総合法律事務所 弁護士 奈良正哉

 

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