先日、宿泊していたホテルでエレベーターを使った時の話です。私が空だったエレベーターに乗って扉が閉まろうとした時、向こうから一人の女性が大声で「ちょっと待ってー!」と走って来たのです。
私が扉を押さえて待っていると、その女性は入って来るや否や「早くおいでー!」と叫んで、後から来る大勢の仲間に呼びかけました。
そして、次々とたくさんの人が入って来て、私は一番奥に押しやられて待っていたのですが、最後らしい人がなかなか来ません。
その時私は少々急いでいたので、この団体の人たちに対していやな気持ちを持ち始めました。そこへようやく最後の人が入ってきたのですが、そのとたんブザーがビーッと鳴りました。
どうなるのだろうと一番奥でヤキモキしていたのですが、誰も動かずブザーは鳴りっぱなし。すると、誰かが「重量オーバーだ」と言ったのですが、その瞬間、最初に入ってきた女性が「みんな片足上げて!」と叫びました。
絶妙のタイミングで何と全員が(私も)同時に片足を上げました。すると!!!…扉が閉まってエレベーターは動き始めたのです。
全員が大笑い。私も大笑いしたのですが、笑ってしまった途端に、さっきのいやな気持ちを持ったことは忘れて、仲間になったような気分になっていました。
今の時代、日本は元気がないと言われていますが、やはり明るく笑いのある生活をすることがいいなあと思った瞬間でした。
では先回に引き続き、洋上研修でのお話を始めます。前回は出発から研修初日の様子、朝礼、講義と4つに分けてリポートしましたので、今回は続きの5番「議論」以下、全部で3つの事柄について、私が感じたことを述べていきます。
5、議論
各チームの団員がコーディネーター(JR東日本、デンソー、キリン、キャノンの部課長で教育や改善のプロの方々でした)の指導に従い、カンカンガクガクの議論をしました。
ブレインストーミング、KJ法、SWOT分析などの技法も活用して、悩みながらもだんだんと議論がまとまっていきます。
最初はどのチームの人も、自分の会社や業界あるいは上司の悪口から始まるのですが、議論を重ねるうちに、自分だけではなくみんな同じことで悩んでいるんだとか、絶対無理と思っていた中に自分にできることがたくさんあるとか、次々と気付きが生まれ、徐々に心が前向きになり、明るく頼もしい顔に変わっていくのです。
それから、議論の方法も発表の方法も昔ながらのホワイトボードと模造紙。パソコンなしです。これも実に大切なことだと発見しました。
船内にはプロジェクターがありますから、パソコンは使えますが、あえて模造紙です。もしパワーポイントの使用が許されたら、チームの誰かが一人で部屋の隅っこで黙々と作業に入るでしょう。
そして、誰かが後ろから覗くと「後で見せるから待っててよ!」みたいな反応になりそうです。ところが模造紙を床においてマジックで書き始めると、みんなが後ろから見て、「そこは赤の太字で強調しよう」とか、「俺がイラスト入れるわ」などと情報の共有化や助け合いといったコミュニケーションをバンバン取っているのです。
その結果、全チームの資料が超個性的でおもしろい! 明らかに、この方法が素晴らしいと思いました。
6、発表会
そして、最後は発表会です。グループ全員で大苦労をして作り上げた内容です。同じところを行きつ戻りつしてお互いをさらけ出した結果の集大成ですから、みんな真剣に聞き入ります。
7、フェアウエルパーティ
最後は、4班それぞれが趣向を凝らしての出し物を披露する<フェアウエルパーティ>です。みんなリラックスしてまるで別人のようです。
素人のはずですが、全チーム実に上手でみんな大笑い、ここでまた絆が深まります。メールなどのデジタルの付き合いでは絶対にできない、ベタでアナログな付き合いの良さもわかります。
さて、今回ご紹介した教育は決して新しいものではなく、むしろ古臭い感じがするものでした。しかし、これからの時代に必要な判断力、コミュニケーション力、説明力などを備えた「真のリーダー」を育てる教育として、非常に有効なものの一つだと思いました。
すなわち、「古いからこそ新しい」というのが私の感想です。そして、私が今回改めて大切だと感じたことですが、やはり教育訓練は必要です。
なぜなら、経営状態が思わしくなく経費が使えないので、教育もできないと言う声を聞きますが、教育をしていないから利益を出せないという一面もありそうです。
というのも、船を降りる時の団員の皆さんの元気な顔を見て、この方たちは会社に帰って活躍するだろうなあと思ったからです。
ぜひとも自社における教育訓練に改善の余地がないかをご確認下さい。そして、全員がパワーアップしてこの難局に立ち向かいましょう!
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