私は以前から定期的に献血をしています(ちなみに今回で73回)
さて、それでは本題に入りましょう。私はいつも次の3つの考え方をもって改善を実行しています。一つ目は“流れを作ること”、二つ目は“全体最適をめざすこと"、三つ目が前回までのコラム「チョコ案制度」の中で詳述した、”全員が参加すること”です。
そこで今回から、前記3つを現場でどのように使って経営力を向上させるかを、私の著書『儲かるメーカー 改善の急所101項』をベースに、具体的な事例を織り込んでお話しいたします。題して、「改善の急所 実践編」です。
さて、それでは第一回目は、改善の基本中の基本といえる“5S”についてお話しします。
先日、埼玉県のU社に伺った時、たまたま生産部門配属の新入社員教育が行われていました。
生徒は4人の新入社員で、先生は私の改善事務局をして下さっているS課長でした。そこで、教室の後ろから入って様子をうかがってみると、ちょうどS課長が新人くんに5Sの説明をしているところでした。以下、S課長と新人くんのやりとりの模様を、絵でご説明します。
私は、新人くんがパッと答えたので驚きました。そして、そのまま様子を見ていると…
私は、新人くんがこの難しい質問にも正しく答えたので、さらに驚きました。U社の新人の皆さんが相当勉強していることが分かります。さらに様子を見ていると…
私は思いました。
と。そこで、講義のあとにS課長に聞いてみたところ、こういう答えがかえってきました。
S課長いわく、「実は、清潔としつけはうまく説明ができないんです。一般に言われている定義は知っていますが、どうもピンと来なくて…。」
ちなみに、一般に言われている定義とは、清潔が「3Sを維持すること」、しつけは「決められたルール・手順を正しく守る習慣をつけること」です。
実はコンサルタントとして5Sを改善で活用している私も、S課長と同様に「清潔」と「しつけ」の説明は苦手です。というのも、私が持っている「清潔」という言葉のイメージが、この5Sの定義と結びつかないからです。また、「しつけ」という言葉には、上から目線の押しつけ的なイメージを感じるので、私は使いたくないのです。
では、私が改善で実行している5Sとはいったい何か。そして、何を目指しているのか。この2点を改めて考えてみました。そして、私がやっている5Sを新しい5つの言葉で定義してみました。
それは、「整理・整頓・清掃・しくみ・幸せ」の新5Sです。最初の整理・整頓・清掃の3Sは同じです。それでは、「しくみ」と「幸せ」とは一体どういう意味か、それは以下のとおりです。
「整理・整頓・清掃」は、一過性の活動では意味がありません。ゆえに、いつも高いレベルの3S活動を維持するためには「しくみ」が必要です。
そして、そもそも5Sは、全社活動です。一部の職場の活動ではありません。社長を筆頭に、全員で助け合って実現します。みんなが会社全体と自分の職場をきれいに、気持ちよくして、生産性を向上させます。
すると、すべての人が会社経営において貢献するので、全員の居場所が明確になります。これにより会社は強くなり、結果的に、働くすべての人が「幸せ」になります。
これが、私の定義した「新5S」です。皆さんの会社でも、これから行う5Sを「整理・整頓・清掃・しくみ・幸せ」の観点から見直し、実行計画を立てて頂きたいと思います。きっとこれまで以上に楽しく実りの多いものとなることでしょう。
【急所100】
◎柿内幸夫と行く!隠れた「お手本」企業の工場見学 http://jmcasemi.jp/seminar/seminar.php?CONTENT_ID=668
これからの日本の製造業に必要なのは、「整理・整頓・清掃・しくみ・幸せ」の新5Sである。