「日本は四季の国」と言われてきました。しかし、この夏も「秋がなかなか来ない」と感じた方は多かったのではないでしょうか。5月から気温30度を超え、9月に入っても熱帯夜が続き、10月に入ってようやく秋らしさを感じられるようになりましたが、それでもまだ半袖で過ごす日があります。つまり、体感的には一年の半分が夏になっているのです。
そんな「夏拡張」の時代に、令和の女性の消費行動は大きく変わっています。実際、産業界でも“夏が長いこと”を前提に、季節の区切り方や商品計画を見直す動きが進んでいます。
例えばアパレル業界では「五季」論が浸透しつつあり、春・初夏(5〜6月)・盛夏(7〜8月)・秋・冬の5つに区切る考え方が取られています。近年はさらに猛暑(8〜9月)を切り出す見方も広がっており、実質的には六季のように扱われる場面も出てきています。
9月いっぱいまでを夏商戦とみなすようになっており、“夏拡張”とは5月〜9月を含む考え方として定着しつつあるのです。さらに近年は、猛暑が長引くことで10月上旬まで夏物が動くこともあります。
また、小売やイベントの現場でも変化が見られます。百貨店は夏物セールを7月初旬から中旬以降に後ろ倒しし、花火大会も猛暑を避けるため開催時期を前後にずらしています。食品・飲食分野ではコンビニ各社がフラッペやアイスの新商品を秋口まで投入し、9月になっても冷菓需要が続いています。
こうした産業界の変化は、生活者のリアルな選択と結びついています。特に令和の女性たちは、長すぎる夏を前提にした新しいアイテムを次々と取り入れています。こうした変化は、食・美容・ファッション・レジャーといったあらゆる領域に及んでいます。
そしてこれらは一過性ではなく、今後も毎年繰り返される現象です。だからこそ、この変化が消費にどう影響しているのかを押さえておきたい。早速、今年の夏の動きを振り返ってみましょう。
★猛暑を起点とした食の新顔がブーム化
「夏は冷たい飲み物とアイス」という定番を超えて、ここ数年は猛暑を起点に生まれた新しい「涼グルメ」が次々と登場しています。
まず注目を集めたのが、ゴンチャの2025年新作ドリンク「ジェラッティー」です。シャリッとした氷の食感とティーを組み合わせた“飲むスイーツ”は、真夏のご褒美として若い世代を中心に話題を集めました。
ゴンチャ ジェラッティー|ゴンチャ
出典:PR TIMES https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000325.000048503.html
さらにここ数年話題になっている韓国発のかき氷「糸ピンス」や、台湾発のかき氷「雪花氷」に加え、「国産メロンを丸ごと使ったかき氷」や「層になったパフェ型のかき氷」といった新メニューも登場しています。
アマン京都では国産マスクメロンを丸ごと器にした贅沢なかき氷を提供し、東京・表参道の「ザ ストリングス 表参道」内「Cafe & Dining ZelkovA(カフェ&ダイニング ゼルコヴァ)」では、5色に重なったカラフルなかき氷にフルーツやニューヨークチーズケーキを大胆に盛りつけた「アメリカンドリーム・レインボーかき氷パフェ」が限定で提供され話題になりました。
いずれも華やかなビジュアルと特別感が特徴で、長すぎる夏を“楽しむ季節”に変える新しいスイーツとして広がりを見せています。
台湾かき氷雪花氷(シェーホアビン)|THE ALLEY
出典:PR TIMES https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000001825.000024488.html
マスクメロンのかき氷|アマン京都 ザ・リビング パビリオン by アマン
出典:PR TIMES https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000055.000070053.html
アメリカンドリーム・レインボーかき氷パフェ|Cafe & Dining ZelkovA ザ ストリングス 表参道
出典:PR TIMES https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000795.000053012.html
一方で、日常の食事にも「冷やし化」の波が及んでいます。例えば無印良品の「冷やし茶漬け」シリーズや「ごはんにかける 冷やし」シリーズ、「素材を生かした 冷やして食べるカレー」シリーズは、暑い日でもさっぱり食べられるメニューとして支持を集めています。
豚汁定食専門店「ごちとん」では夏限定で「冷やし豚汁定食」が提供され、人気メニューになっています。かつては温かい料理であることが当たり前だった豚汁や茶漬けも、いまでは“冷やし版”が登場し、夏の食卓を彩るようになりました。
冷やし茶漬け 黒酢とかき卵|無印良品
冷やし茶漬け きざみ野菜の山形だし|無印良品
ごはんにかける 冷やしごま豆乳担々スープ|無印良品
素材を生かした 冷やして食べる レモンクリームチキンカレー|無印良品
出典:PR TIMES https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000001672.000000987.html
麦味噌の冷やし豚汁定食|ごちとん
出典:PR TIMES https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000001092.000032350.html
実用的なアイテムも続々と増えています。最新の熱中症対策として注目されるのが、“飲む氷”とも呼ばれる「アイススラリー」です。細かい氷の粒を含むシャーベット状の飲料は、効率的に体を冷やせるとされ、屋外イベントや通勤・部活動など、炎天下での活動を支える新しい選択肢として急速に浸透しつつあります。
さらにクラフトボスの「凍らせてラテ・フラッペ」のように、家庭の冷凍庫で凍らせて仕上げる飲料も登場しました。これまでもペットボトルを自分で凍らせて楽しむ人はいましたが、メーカーがそれを前提に商品化したのは新しい動きです。酷暑の中で効率的に冷たさを確保できる実用的な選択肢となっています。
ポカリスエット アイススラリー|大塚製薬
出典:PR TIMES https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000151.000048278.html
アクティブサプライ アイススラリー|五洲薬品
出典:PR TIMES https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000009.000018020.html
クラフトボス 凍らせてラテ・フラッペ|サントリー食品インターナショナル
出典:PR TIMES https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000706.000027480.html
そして、「冷やす」とは逆のアプローチですが、酷暑の中で「辛い料理」も人気を集めています。汗をかくことで体が冷えて涼しく感じられたり、代謝が高まって夏のだるさを吹き飛ばせる感覚が得られたりするからです。
東洋水産の「沼る唐辛子」「沼るコショウ」をはじめ、外食やコンビニでも夏限定の激辛メニューやスパイスを前面に打ち出した商品が次々に登場しています。最近では刺身や出汁にまでスパイスを合わせる商品が登場し、「こんなものにまで?」という意外性も話題に。さらに、激辛に挑戦する体験はSNSとの親和性が高く、Z世代にとって“楽しむ消費”の一つとして定着しつつあります。
1
2


































