展示会では売り込みは逆効果!では何をすればよいのでしょうか?
展示会営業®コンサルタントの清永健一です。
突然ですが質問です。
「来場者は何のために展示会に来るのでしょうか?」
考えてみてください。
来場者として展示会に出向いたことがある方は、その時のことを思い出してみるとよいでしょう。
そうです。来場者は、「情報収集」のために展示会に来るのです。以下は、弊社が2020年に実施したアンケートです。
「情報収集や業界トレンドの把握」が、74.5%と大多数を占めていて、「特定の製品やサービスの商談」という回答を大きく上回る結果になります。
特定テーマの商材が一堂に集まる展示会は、業界や市場の情報を収集するのに最適な場ですから、これはある意味当然の結果と言えるでしょう。
来場者は、「買いに来ているのではなく、情報収集に来ている」のです。このことを踏まえた上で、展示会場でどのように来場者を惹きつけるかを考えることが非常に重要なのです。
では、どのように来場者を惹きつければよいのでしょうか?
来場者が情報収集に来ているわけですから、出展社であるわたしたちは、「情報提供」をすればよいのです。
「何を当たり前のことを言っているんだ?」
あなたはそう思ったかもしれません。でも、本当の意味でこのことを理解している出展社は、わたしの感覚値でいうと全体の10%もいないのです。90%以上の出展社が情報提供の意味をまちがえています。
多くの出展社は、展示会場で、情報提供のつもりで、出展商材の特徴、性能、スペックや価格を来場者に伝えます。しかし、この行為は本当の意味での情報提供ではありません。多くの場合、こうしたことを伝えられた来場者は、「売り込まれた」と感じます。
来場者は、「買いに来ているのではなく、情報収集に来ている」のですから、売り込まれたと感じた瞬間に、心を閉ざしてしまいます。心を閉ざしてしまった来場者があなたの会社の商材の購入を購入するはずはありません。これでは成果が出るはずがないですね。
出展社からすると良かれと思って一生懸命やっていたやり方が、実は逆効果になってしまうのです。悲しいですね。そうならないようにどうすればよいのでしょうか?それは、来場者の悩みに寄り添い、その悩みの解決に役立つ情報を提供することです。
勘のいい方は、もうお気づきかもしれません。そうです。
前々回のコラム(https://plus.jmca.jp/kenbun/tenji2506.html)でお伝えした出展コンセプト検討シートの右上:「その人が心の中でつぶやいている悩みは?」に対応した情報提供をするのです。来場者の悩みへの解決策を提供できるとベストです。ただし、この時に注意しなければならないのは、いきなり社商材の活用を前提とした解決策を言わない、ということです。自社商材の活用を前提とした解決策とは、出展コンセプト検討シートの右下:「だったらうちが(こんな風に)役に立てますよ」のことです。これをいきなり伝えると、来場者は「売り込まれた」と感じてしまうからです。
たとえば、前々回のコラムで例に挙げたオーアンドケーなら、介護施設の経営者、施設長の「ノロウィルスとかインフルエンザがホントに怖い」という悩みに寄り添って、対応する情報提供をします。ただし、この時、「あっ!だったらうちの定期清掃がおすすめです」というようにいきなり自社商材を活用した解決策を伝えてはいけません。もっと、純粋に、ノロウィルスやインフルエンザを発生させないための相手の役に立つ情報提供をするのです。
たとえば、
・手洗いのポイント
・うがいのコツ
・消毒をする時の注意点
・注意喚起のポスターに記載する内容
などなど、さまざまな情報提供が考えられるでしょうね。こうしたお役立ち情報の中のひとつとして、自社商材である清掃を伝えるのです。
すると、来場者は、「あ~。このブースは、単に売りたいだけじゃなくって、本当にうちの悩みを解決しようとしてくれてるのかもなぁ」と思うようになります。ちょっとしたちがいに思えるかもしれません。でも、この差があとで大きく効いてきます。微差が大差を生むことになるのです。
それと、ここでもうひとつポイントがあります。それは、自社が解決できない悩みにも触れる、ということです。出展コンセプト検討シートの右上:「その人が心の中でつぶやいている悩みは?」の中には、自社で解決できないものもあるはずです。
たとえば、オーアンドケーなら、
・「スタッフの人間関係が悪いんだよなぁ」
・「スタッフがまた辞めてしまった」
・「入所者や家族からまたクレームが・・・」
・「スタッフが採用できないなぁ」
・「入所者が増えないぞ」
・「ヤバイ!今、監査来たら対応できないぞ」
などが、それです。
むずかしく考える必要はありません。
「あなたは、こうした悩みを抱えておられるのではないですか?」と伝えるだけでよいのです。
「そんなことをして、もし、『そうなんです!なんとかしてください!』って言われたらどうするんだ。うちでは解決できないぞ。」
あなたは、そう思ったかもしれません。でも、解決できなくてもいいのです。
「そういう悩みがあるのですね。大変ですね。」と共感してあげるだけで十分なのです。そうした姿勢を来場者は敏感に感じ取ります。「このブースは他のブースと何かちがうなぁ。」と思ってもらえるはずです。
◎2025年10月中旬から11月のおすすめ展示会
※展示会・イベントの日程は変更することがあります。公式サイトから確認をお願いします。

清永 健一(きよなが けんいち)
株式会社展示会営業マーケティング 代表取締役
展示会営業Ⓡコンサルタント。中小企業診断士。奈良生まれ、東京在住。神戸大学経営学部卒業後、メガバンク系コンサルティング会社など複数の企業で手腕を発揮し、2015年に独立、株式会社展示会営業マーケティングを創業する。「展示会は売上アップへの投資効率に最も優れた手法」と主唱。支援先企業からは、集客・受注・売上が大幅に増加したと好評の声が多数あがる。著書の「飛び込みなしで新規顧客がドンドン押し寄せる展示会営業術」「中小企業のDX営業マニュアル~オンライン展示会をきっかけとした営業改革術」(ともにごま書房新社)、「仕事のゲーム化でやる気モードに変える」、「営業のゲーム化で業績を上げる」(ともに実務教育出版)はいずれもamazon部門1位を獲得。行政、公益法人、金融機関、各地の商工会議所など講演実績多数。 ホームページ:https://tenjikaieigyo.com/
ビジネス見聞録WEB 2025年10月号 目次
・p1 収録の現場から 〈大竹愼一「2025年 秋からの最新経済予測」音声講座〉
・p2 講師インタビュー【HD化を活用し、経営のメリットを最大化せよ!】江幡吉昭
・p3 今月のビジネスキーワード「建設業界の2025年問題」
・p4 令和女子の消費とトレンド「“夏拡張”で変わる令和女子の消費動向」
・p5 展示会の見せ方・次の見どころ
































