3年で離職率93%の“常に人が採れない、育たない業界”で創業来30年以上も確実に成長し続けるアースホールディングス。生まれ持った才能も、入社時の能力も、今の採用難にも負けず、誰もが稼げる人材に育つ仕組みを構築し、今や従業員2,800名、のれん分けした社長の分身101名のオーナーを率いて国内外に人気美容室「EARTH」を248店舗展開。創業者の國分利治氏とナンバー2の山下誠司氏に、アース流の〈人を磨く〉家族経営についてお伺いしました。
■國分利治氏(こくぶん としはる)/株式会社アースホールディングス 代表取締役
1958年福島生まれ。19歳で上京。30歳で独立。東京に「EARTH」1号店を開業。国内外に248店、約2800名を擁する業界最大級美容グループに成長させる。社員から101名のオーナーを輩出した独自の“のれん分け”FC制度で注目。年商180億・年収4億の「ヘアサロン業界の風雲児」としても広く知られる。著書に「成功を引き寄せる 地道力」。
■山下誠司氏(やました せいじ)/株式会社アースホールディングス 取締役/サンクチュアリ 代表取締役
1976年静岡生まれ。高校卒業後に上京。19歳から39歳までの20年、ほぼ休み無く仕事をして一流の仕事の流儀を確立。31歳でアースホールディングス取締役に。國分氏の右腕として実務を支えつつ、自身も経営者として、全国16都道府県に14拠点を創り、5世代・27名の経営者を輩出。著書に「年収1億円になる人の習慣」がある。
人材難の時代ですが、アースの人材観について教えて下さい。
國分 今でこそ全国248店舗、2800人規模を安定的に経営できるようになりましたが、そもそも美容業界は、人が極めて定着しにくい。永く続けるには人材育成・定着の仕組みが必須でした。
創業時、とにかく「ハッピーに働ける」「人が育つ」「利益が出せる」仕組みにしようと勉強して国内外の良い事例を合わせ、中小企業が実践できる形にしたのが独自の「のれん分けFC」制度。業績好調な店舗を優先して、次世代オーナーに任せていく方式です。
業績の良い店舗を譲ると、一時的に売上は下がりますか?
國分 確かに下がる事も多いですが、それで良い。僕達は、アースの事が好きで、愛着心がある人にやって欲しいし、アース全体が自分と同じ考えを持った集合体であって欲しい。社員は家族です。
だから、一時的に黒字の店舗の利益を削ってでも、一緒に将来やっていける仲間を創る。永く続けるには、その方が何十倍も良い結果をもたらすと考えています。
「今いる戦力の底上げ」が創業者の仕事です。部署や店舗、場所は違えど、我が子の成長や幸せを願わない親などいないでしょう。
國分社長は一見派手に見えますが、実際はどうですか?
國分 豪邸(兼研修所)に住み、フェラーリを乗り回し、サーフィンをして顔は日焼け…の印象ですよね。うちの場合は若い社員が多いので、彼らに夢を見させられる経営者像を演じています。業種が違えば、違う演じ方をしていたでしょうね。普段はフェラーリも乗らないし、サーフィンもしない。好きな飲み物は、水です(笑)
山下 メディアが飛びつくのはそんな國分の「派手」な部分ですが人の目に触れない「陰の努力」の部分こそが重要です。おにぎりは1個110円まで、出張先は最安値ビジネスホテル、落ちた輪ゴムも洗って使う、資料は基本、裏紙印刷…人には強制しませんが、超がつくほどの節約家です。
一方で、1回数百万の海外視察旅行を組んだり、表彰イベントや研修・ブランディングのためのヘアショーを主催したり、全国の社員が集う会議に大金をかけたり…。
会社と社員を成長させる目的以外のことには、1秒も1円も無駄にしない。時間とお金の使い方に一貫性がありますね。
國分 結局、人への投資が一番のリターンになる。まずは複雑なシステムや設備の導入等に悩むのでなく、いかにお客様に喜んでいただき、社員が楽しく働き、その結果、儲かる経営ができるか。そこに注力し続けてきたからこそ、今もアースが成長できるのです。
※本コラムは「人磨きを極める経営」収録時の内容の一部を抜粋・編集したものです