ネット通販でひときわ元気な企業の一つが、感動食品専門スーパー「Oisix(おいしっくす)」を展開するオイシックス株式会社(東京都品川区)である。同社は10年前、「より多くの一般のご家庭の、豊かな食生活を簡単に実現できるサービスの実現」をコンセプトに会社設立したベンチャー企業である。独自のやり方でニッチ(すき間)を狙い、今や、購入経験者48万人、定期購入者4万人の規模に成長している。
若手経営者の高島宏平社長率いる同社は、「健康にいい食品のインターネット通信販売業」と「健康にいい食品の店舗宅配事業(牛乳宅配ルート)」の2本柱の事業展開である。売上げも5年前の約3・7倍の71億2600万円(2010年3月期)と業績も伸びている。顧客も仕入先に当たる生産農家も、口コミ戦略とバイヤーの直接営業で進めている。
同社のユーザー層は30代から40代の小さな子どもを持つ主婦が中心である。1回当たりの購入品目数は13から14品目、平均客単価5200円。扱っている商品数は常時2600品目(野菜・果物が約200品目、加工品が約2200品目、その他が約200品目)である。
同社の特徴は従来の自然食品通販とは異なっている。「会員制」「定期・大量購入」のシステムサービスが多い中で、入会金・年会費が一切無料、定期購入サービスに加入しなくても利用できる。さらに、土・日も含めて、届ける日時を指定できるところが特徴でもある。一言で言えば、「Oisix(おいしっくす)」は“生活者の視点”のサービス内容になっている。だから、消費者の支持が拡大しているのである。
高島宏平社長は、仕事を進める上で大事なことを2点、社員に伝えている。特に、仕事で判断がしにくいとき、困った問題が起きた時に、どうするか。スタッフで話し合うのだが、その前に、「お客さんに聞いた?」が口ぐせのように飛び出してくる。「お客に聞く」ということは、直接会って話を聞くか、電話でやりとりをすることが大事だといつも言っている。
もう一つは「逆算して行動しろ」と檄を飛ばす。仕事の目標にしろ、立てた計画に対する姿勢を教えている。一歩一歩前に進むことはいいことだが、目標を達成することが肝心であると、力説する。一生懸命やったけど達成しなかった、という甘えや執念の無さに対する厳しいセリフである。最後は達成するという目標に対して、逆算した行動があれば、達成する確率も異なってくる。何のための目標か、を問いながらの仕事ぶりが必要という。
上妻英夫