多来多来(たくたく)
(京都府)
今回は、この多来多来から学ぶことにしよう。
しかし、多来多来に実際行ってみると学ぶとことがたくさんある。
その地に根を張り、息の長い商売をするには生涯顧客としての関係を築かなければならない。そのために大切なことは、新規客の段階あるいは、早い時期に信頼されることであることは言うまでもない。
人口増加に支えられていた成長の時代は、需要>供給の状況があり、売り手側の都合で動いた。しかし、2005年以降の供給>需要の状況となり、かつ、2010年以降、情報の大衆化がおこり情報の入手・発信が自由になったことにより、消費者の都合で動くようになった。消費者は情報を自由に入手して、より失敗しなそうな確実な店を選ぼうとするようになった。
今、リテール(流通)とレストランのハイブリッド店舗が世界的に広がっているが消費者により安心感を与える有効な手法と言えるだろう。前回紹介したマンハッタンの“EATALY”は、その代表だ。消費者と直接取引していない危うさを感じたメーカーや流通が増えているし、その解決法がリテール(流通)とレストランのハイブリッドの店舗を開設することなのだ。
供給>需要 となった2005年以降の環境に加えて、情報の大衆化で情報の入手・発信が自由になった2010年以降の環境の波にフィットし浮上したのが、多来多来だ。
チェーン店でない地域密着の肉屋が経営している安心感を武器に肉をうまく売っている。と言えるだろう。
肉屋のやっている安心感とは
多来多来から漂う、肉屋がやっている安心感とはなんだろう?
私は下記の五つに集約できると思う。
- 生ものの安定した提供 (肉屋だから鮮度がいいという安心感)
- カウンター席に内にスライサーを置いて、カットを見せて、(調理プロセスの見える化をすることで演出される安心感)
- スタッフがほとんど社員(そうでないかもしれないが、そう見える)で、いつも(同じスタッフがいる安心感)
- 気軽な雰囲気の安心感(よく作りすぎていない、日常使いの居心地のよさの安心感)
- お客様の利用シーンに応じたおいしさの提供ができている(店の対応の安心感)
この五つの中でも、お客様の利用シーンに応じたおいしさの提供ができているという項目は地域密着で長期経営する上で、重要なので、掘り下げよう。
多くの外食ビギナーである庶民が焼肉屋で食べたいのはご飯だ。
そのために、「タレものがご飯に合うように設計できているか」「ご飯はスピーディに提供できているか」を確認する必要がある。ご飯にタレものが合うという落とし込みをするときに、あえて良い肉だとしてもジャガードをばっちり入れ、タレの味がしみ込むようにする必要がある。
焼肉屋は時間を大切にする傾向があるが、食事需要のお客様の滞留時間を長くするように店づくりすることは禁物なのである。
様々な利用動機にこたえられる客席設計も非常にバランスのよい店の条件。
多来多来は十分に応えていた。
多来多来はエッジが効いている商品構成ではないが、庶民にとって減点の少ない安定感のある地域密着の焼肉屋である。
京都府久世郡久御山町大字森小字村東223-3
電話 075-632-2929