menu

経営者のための最新情報

実務家・専門家
”声””文字”のコラムを毎週更新!

文字の大きさ

マネジメント

後継の才を見抜く(8) 本田宗一郎の引き際

指導者たる者かくあるべし

  「猫の首に鈴をつける」ことは難しい。であればこそ諺にもなる。時代の動きについて行くためには、どんな組織も世代交代が不可欠だ。
 
  企業経営であれば、次世代にうまくバトンタッチできるかどうかが、企業が永続できるかどうかに関わってくる。
 
  町工場から身を起こした本田技研工業(ホンダ)は、根っからのエンジニアである本田宗一郎と、販売・金策の天才である藤沢武夫の社長、副社長コンビで順調に業績を伸ばしていた。
 
  職人としての腕と発想に絶大の自信を持つ本田は、技術研究所を舞台に新技術開発に没頭する。二輪車の成功を基盤に四輪への進出を夢見ていた。
 
  藤沢はというと、事業が順調であればこそ、次世代の経営陣の育成に腐心していた。
 
  藤沢は早くから、二人の天才による牽引では事業経営はやがて行き詰まると考えた。
 
  まだ草創期から、「創業者の一番大事な仕事は、次の世代に経営の基本をきちんと残すことだ」と周囲に宣言していた。そして行動に移す。
 
  これはと見込んだ部長、次長クラスを取締役会に出席させて討議の輪に加え、マネジメント能力を磨かせた。
 
  そして30代の若い取締役を次々と誕生させ、若い四人の専務による集団指導体制の布石を打っていく。
 
  「カネのことはお前に任せる。その代わり技術については口を出すな」と本田が宣言した二人三脚による創業体制は絶妙なバランスだったが、やがて、暗礁に乗り上げることになる。
 
  本田は、二輪車で磨き上げた空冷エンジン技術に絶大な自信を持ち、その技術を持って四輪の世界に挑むことを決断する。
 
  確かに360ccクラスの軽四輪では「ホンダの空冷」は一世を風靡したが、1000ccを越える本格的乗用車では、他社が進めるラジエター式の水冷エンジンに分があった。
 
  現場の技術陣には、「技術的に限界のある空冷にこだわり続ければ会社はもたない」と不満がわだかまったが、「これは俺が作った会社だ。いやなら辞めちまえ」と吠える社長に、表立って非を鳴らすには勇気がいった。技術者たちのサボタージュが始まった。
 
   「よし、俺が言おう」。藤沢が動き出す。   (この項、次週に続く)
 
 
 ※参考文献
 
  『夢を力に』本田宗一郎著 日経ビジネス文庫
  『ホンダ神話 教祖のなき後で』佐藤正明著 文春文庫
  『経営に終わりはない』藤沢武夫著 文春文庫
 
 
  ※当連載のご感想・ご意見はこちらへ↓
  著者/宇惠一郎 ueichi@nifty.com 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

後継の才を見抜く(7) 動き出す秀忠前のページ

後継の才を見抜く(9) ホンダのツートップ、幸せな引退次のページ

関連記事

  1. 人の心を取り込む術(10) 戦いの目的を体現して見せる 上 (不敗の名将・今村均)

  2. 永続企業の知恵(7) 商機をつかむ才覚(鈴木商店)

  3. 逆転の発想(18) 熱血指導だけでは名門チームは蘇らない(プロ野球監督・星野仙一)

最新の経営コラム

  1. 第183回 菊寿司 @福島県相馬市原釜 ~地魚主体の握り

  2. 第七十一話_禁断の組み合わせから地域活性化へ - 和歌山県田辺市のうなぎ販売展の革新的ビジネスモデル

  3. 第179回 米国に制裁されても反米しない華為

ランキング

  1. 1
  2. 2
  3. 3
  4. 4
  5. 5
  6. 6
  7. 7
  8. 8
  9. 9
  10. 10
  1. 1
  2. 2
  3. 3
  4. 4
  5. 5
  6. 6
  7. 7
  8. 8
  9. 9
  10. 10

新着情報メール

日本経営合理化協会では経営コラムや教材の最新情報をいち早くお届けするメールマガジンを発信しております。ご希望の方は下記よりご登録下さい。

emailメールマガジン登録する

新着情報

  1. 社長業

    Vol.15 未知の世界」へのトビラを開けてくれる人こそ社長の財産です
  2. 戦略・戦術

    第245号 1,122 万人
  3. 戦略・戦術

    第2回 経営を継続するにはどうしたらよいのか?
  4. マネジメント

    第52回 『象を食べる方法』
  5. 後継者

    第73回 エリート養成 ― 大局観がもてる人
keyboard_arrow_up