昨年、銀行の元頭取とお話しをする機会がありました。
「来年は今年よりも倒産が増えそうです。」とのことでした。その後、現役の役員と話しをしても、同じことを言っておられました。
その理由は、二人とも同じです。
「コロナ融資の返済が本格的に始まるから」ということです。
一部の業界や企業ではすでに返済がスタートしていますが、多くはコロナ融資から満3年を迎える2023年の春から、返済がスタートします。
「どうやら、返済開始に耐えられない会社が、それ相応の数あるようで、各銀行はその選別に動き始めています。」
とのことなのです。本来、銀行は不良債権を発生させたがりません。回収不能の損失を被ることと、金融庁からのおとがめを嫌うからです。
しかし、コロナ融資に関しては、保証協会が銀行に対して、100%の保証をしています。なので、コロナ融資を受けた企業が倒産しても、銀行は保証協会を通じて100%回収できるのです。回収不能の損失はなく、痛みがないのです。通常、保証協会は最高80%保証なのです。
だから銀行は、返済が厳しくても継続融資をする会社と、返済不能であれば、もうそこで見限ってしまう会社を、今の打ちから選別し始めているのです。
となると、倒産が増えるのは当たり前なのです。彼らは、そのことを承知しているのです。2023年の銀行は、そのような状況にあると、知っておいてほしいのです。
加えて経営者の皆さん気にされているのが、銀行借入金利の同行です。
私たちは常々、タイボ(TIBOR)+スプレッド(上乗せ)で借りなさい、と言い続けています。
タイボ(TIBOR)は、Tokyo InterBank Offered Rate の略で、“東京銀行間取引”と呼ばれています。東京の銀行間で日々行われている、お金の貸し借りをする際の取引金利です。日本経済新聞の金融欄に、毎日その金利が掲載されています。
そのタイボ(TIBOR)の最近の同行をご存じでしょうか。
2022年4月1日と2023年1月31日では、直近の1月31日のほうが、低いのです。要は、戦争や円安などのこの局面においても、タイボ(TIBOR)金利は下がっているのです。
結局、カネ余りの環境は変わらず、コストインフレであっても、資金需要は膨らんでいない、ということです。だからタイボ(TIBOR)金利は今も下がっているのです。
最近、「そろそろ変動金利のタイボはやめて、固定金利にしたほうがよいでしょうか」
という質問を受ける機会が増えてきました。
インフレ傾向に移ってきたかたといって、金利がすぐに上がるのではありません。資金需要が増えてきて、お金が不足してきたときに、銀行金利は上がるのです。だから今はまだ、タイボ(TIBOR)+スプレッド(上乗せ)の考え方で銀行交渉に臨んでほしいのです。
とはいえ、銀行から、
「20年、固定の0.3%でどうですか?」
と破格の提案があれば、受け入れればよいのです。実際に、そのような顧問先があるのです。一番よくないのは、
「そろそろ金利が上がりそうだから・・・」
と銀行員からそそのかされ、安易に固定金利で契約してしまうパターンです。
固定金利の多くは、1%超かと思われます。長期借入期間で多いのは、7年前後です。では今後の7年間で早々に、
「固定にしておいてよかった。」
と思えるまで、日本の銀行金利が急上昇するかというと、しないと思うのです。
金利が上がるとすれば、デフレ対応で海外へ移した生産拠点を国内に戻し、“メイド・イン・ジャパン復活!”で設備投資が日本国内で活発化してきた時だと考えるのです。お金がどんどん必要になったときです。
「働く人が少ないから、国内回帰はムリでしょう。」
とおっしゃる方もおられます。が、それを克服するのがロボットやシステムであり、規制緩和による外国人労働者の活用です。そのための底力は、備わりつつあるのです。
事実、早々にメイド・イン・ジャパンを復活されている顧問先もあります。
その会社では、海外生産を国内生産に戻しても、少人数で対応できるよう、ロボットとシステムをフル活用し、新しい時代環境に適応した収益体質を構築しておられます。
現状では、日本の金利が短期間で急上昇することはありえません。借入をするにしても、変動金利で対応して返済を進めればよいです。数年後、本当に上がってきたら、借り換えをすればよいのです。今の時点では、変動か固定かで悩むより、劇的な環境変化に適応すべく、収益体質改善に取り組んでほしいのです。