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戦略・戦術

第六話 顧客取材で突破口を掴んだ小さな町工場の取り組み

中小企業の「1位づくり」戦略

こんにちは!
1位づくり戦略コンサルタント
佐藤元相(さとう もとし)です。

下請け町工場は親会社から与えられた図面通りにモノをつくります。
図面から製作費用の見積もりをするが価格決定権は自社にはありません。

そんな状況で価格競争から脱却している町工場があります。

創業昭和17年の株式会社末広機械製作所は
鍛造金型部品を加工する
従業員数10人の小さな下請け町工場です。

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鍛造金型とは、自動車エンジンなどの部品を
つくるために必要な設備機器の部品です。

代表の西尾一夫氏(現 取締役会長)に話を聞きました。
「円高不況 バブル崩壊 、大きな影響もなく、
なんとかやってこれました。

しかしリーマンショックは特別だった。
経験したことのない不況でした。

しばらくじっとしていれば、いずれ景気はよくなる。
なんとかなると思っていましたがどうにもなりませんでした」


末広機械製作所は、リーマンショック以降
業績不振にあえいでいました。


さらにライバル会社とのコスト競争や
取引先からの受注減少もあり、
売上げは最盛期の1/3にまで落ち込みました。


打つ手が見つからない。
容赦なく業績は下降し続けました。


待ちの営業から攻めの営業へ

会計を担当のはるみさん(現 代表取締役)は
営業担当を買って出ました。

「自分がなんとかしなければ...でも営業のことが分からない」

どうすればいいものか?

はるみさんは、あるとき、製造業の営業研修があることを
知り、参加を決めました。

私(佐藤)との出会いはこのときでした。

研修が終わった会場に彼女は最後まで残っていました。

「会計係の仕事をしていて、営業のことは全く分かりません。
こんな私でも勉強して大丈夫でしょうか?」

はるみさんの話を聞きました。

加工技術のことはよく分からない。
昔の古い機械を使って部品加工している。

職人の技術はどこにでもあるモノで特別なことはない。
会社の強みもなんだかよく分からない。

それでも研修を受けてなんとかなるものなのだろうか?

私は「会計係だとか営業係だとかは問題ではありません。
問題なのは経営の原理原則を理解していないことです。

経営の知識は学べば身につくモノです。
役職は関係ありません。
素直に学び、できることはすべてやることです。

今は苦しいかもしれませんが、諦めずに継続して取り組めば
必ず成果を得ることができます」と思いを込めて伝えました。

自社の強みを発見する顧客取材

最初に顧客取材から始めました。

顧客を取材する理由は、私たちが考えている会社の強みと
お客さまが選んでくれている理由に大きなギャップが存在するからです。

当たり前のようにやってきていることが、
じつは特別なことだったりもするのです。

多くの会社でこうした取り組みを行うべきことなのですが、
実際に顧客取材を実行しているのは多くありません。


「これをもってお取引先を取材しようと思います」
会社案内を開いて見せてくれました。

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はるみさんの顧客取材は独創的でした。
会社案内は手作りで、彼女がパソコンで作ったモノでした。

彼女は長年お世話になっている取引先を訪問しました。

「こんなん作りました。
よろしければ、アドバイスを頂けませんか?」
と言って、手作りの会社案内を見せた。

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↑「こんなん、まだ作っています」

 

すると取引先の担当者は
「あなたの会社の得意なことは○○でしょ」
と言いました。

その得意なことは会社案内のどこにも記されていません。


はるみさんは、ハッとした。
もしかしたら・・・これが?


それは、取引先が末広機械製作所を
選んでくれている理由でもありました。

技術的なことは判りません。

社長と相談して会社案内に取引先の声を書き加えました。

そして後日、取引先に「会社案内を作りかえました」と
再度、報告に訪問をしたら、「それやそれ!」と言って
「あんたのところはまだやる気があるんか?」、
「うちの購買担当をあんたの工場へいくように言っておく」、
「社長は元気か?」などと、声を掛けてもらいました。


素直な行動と取り組みがお客様の評判を呼んで
新たな取引が始まりました。


また別の取引先でも「工場を見えてもらえませんか?」と
購買担当者から声をかけられた。


顧客取材で訪問するたび受注の機会が少しずつ増えていきました。
はるみさんは取材営業に手応えを感じたといいます。


取引先をはじめ、仕入れ先も自社の大切な情報源です。

ある日のことです、仕入れ先から
「あなたのとこはDH31S(特殊鋼)を
加工するのが得意だろ、他の会社は嫌がってやらないよ」
と教えてくれました。


DH31Sの加工は、当たり前にやってきた技術で
何も特別なことではないと思っていましたが、

仕入れ先の情報からDH31Sの特殊鋼の加工は
手間がかかるのでどこもやっていないことがわかりました。

 

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そこではるみさんは、DH31S特殊鋼加工を得意とする
町工場であることを全面に打ち出すことにしました。

 

過去の名刺を引き出しから取り出し、
会社案内をもって訪問をはじめました。

 

先行きの見えなかった将来に光が見えました。


それから2年後、末広機械製作所の業績は
順調に伸び、新たな人材を採用し、設備も増強しました。

その取り組みは、ビープラッツというフリーペーパーに、
「女性経営者という生き方」というテーマで記事になりました。

 

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下請け町工場が価格競争から脱却するためには
お客様に選ばれている理由を探究することにある!


取材営業で得られるメリットは3つあります。
1つは自社の選ばれている理由を知ることができる。
2つめは顧客との人間関係がより良くなる。
3つめは価格競争から脱却できる。

この取り組みから、
過去最高の売上げと利益を達成しています。


このことから、西尾一夫社長は会長に、
会計係だったはるみさんは社長に就任しました。

最後に末広機械製作所 代表の西尾はるみさんを
取材した動画をこちらで公開しています。
https://www.youtube.com/watch?v=4bdqEP8qFHw


* Bplatzは2001年1月、大阪産業創造館の開業に合わせて創刊したフリーペーパーです。
「中小企業のまち大阪が元気になるには、がんばっている大阪人がいることを大阪人に伝えるのが一番」というコンセプトのもと、関西で活躍する元気でパワフルな経営者やユニークな取り組みを行う中小企業にフォーカスした記事を掲載しています。大阪市内に3万部。

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