小さな会社や店舗の経営者の悩みである人材採用。
日本の生産年齢人口は年々大きく減少し続けています。労働人口が減少し、働き方改革関連法案などによって世の中が大きく変わっていく中、小さな会社にはもはや打つ手はないのでしょうか?
大手と違ったやり方で、人材を確保する方法はないのだろうか?多くの会社が悩む中、私は一筋の光を見出しました。小さな会社が大手に勝てる人材採用の方法です。この方法により、経営者の望む人材が集まり、しかも給料が高いとか低いといったことから比べられることもなく、長く働いてもらえるような人が集まる採用の戦略を考案したのです。
事例から紹介しましょう。
岐阜県山県市、大和川に囲まれて青い空が広がる町にあるオーダーメイド家具専門店のF・FURNITURE/藤岡木工所の取り組みです。
「採用に困ることはありません」と当社の社長は言います。若い人たちが「モノづくりをしたい」と言って、いろんな地域から「訪問してもいいですか?」と連絡が入るのです。2021年も新卒3名を採用したと話していました。
連絡してきた若者に「あなたには可能性があるから、うちのような小さな工場で働かなくても。給料は高くないし」と社長は何度も断っていました。それでも「ここで働きたいです。ぜひお願いします」と申し出る人が絶えません。
じつは、藤岡木工所は採用に関する募集をいっさい行っておりません。にもかかわらず若い人たちが「職人になりたい」と自ら手を挙げてやってくる会社なのです。
なぜ、彼らは「藤岡木工所で働きたい」と手を挙げるのでしょうか?社長の藤岡さんに理由を訊くと「よく分からない」というのです。不思議に思いました。そこで新卒採用した2人に「どんな理由で藤岡木工所を選んだのか?」をヒアリングする機会をいただきました。
2018年採用の野田君に質問しました。
「新卒で入社したきっかけは何だったの?」
「ボクは幼いころから大工になりたいと思っていて、いくつかの工務店を見学しました。合同説明会にも参加しました。そんなあるとき、Webサイトを検索していて藤岡木工所を見つけました。サイトに出てくるスタッフのみなさんの笑顔がとても印象が良くて、楽しそうだと思いました。またもの作りだけではなく、お客さんと一緒に体験するイベントがいくつもあって、この会社に入れば自分は成長できそうだと思いました」
つぎに2019年採用の松田君に訊いてみました。
「中学生のころ、夏休みの自由研究で木を使ってイスを作ったのがとても楽しくて、もっといろんなもの作りをしたいと思い、地元の工業高校に入りました。また、おじいさんが家具職人だったこともあり、父から『お前はじいさんの血筋でセンスがある』といつも誉めてくれました。仕事をするのなら『手づくりにこだわりたい』と担任の先生に相談すると、藤岡木工所を紹介してくれました。ボクはオーダーメイドのものづくりにずっと憧れていたので、この機会を見逃してはいけないと先生にお願いしました。また、この会社の人たちは新人のボクでも職人として扱ってくれるので、仕事にやりがいを感じています。この会社で働けば必ず立派な家具職人になれると思っています。」彼は喜びをかみしめるように話してくれました。
新卒で採用された彼らは、これまでに多くの企業と接点がありいくつも選択肢のある中からこの藤岡木工所を選んでいました。一般的に給料や職場の環境、福利厚生など待遇面を充実させるだけで、やりがいを高めることはむずかしいのです。働く人たちとの関わりや自分の成長を感じられる機会の提供などが採用に効果的であることは間違いなさそうです。
そこで重要なことは、スタッフの取材です。「なぜこの会社を選んだのか?」スタッフの取材を通して、客観的に評価・考察することです。
彼らがこの会社を選んだ真の理由はどこにあるのかを徹底して取材することが大事になります。聴けば教えてくれる。他社と自社との違いをどんどん話してくれます。
採用を成功させるためには、最近入社したスタッフにヒアリングするといいでしょう。
その声の情報から自社の価値を分析し、人材採用に活用していくのです。